オンチョロチョロ出て来られ候 オンチョロチョロ何やら囁かれ候 オンチョロチョロ出て行かれ候 泥棒は命からがら逃げ出したとさ
― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに婆サが住んでおった。
ある晩、旅の坊ンさんが道に迷ってたずねてきた。婆サは一人住まいで寂(さび)しかったものだから、喜んで、
「はいはい、なんぼでも、泊(と)まってくんなせ」
と、言うて泊めたと。
夜ふけに、
「坊ンさま、おら、いつも一人でたまらんねぇすけ、お経(きょう)をひとつ教(おせ)えてくんなせ」
と、願(ねご)うた。
坊ンさんは、実は本物の坊ンさんではなかったから、
『あれ、これは困ったぞ、どうしょうかの』
と、ほとけさまの前にすわっていると、壁の穴から、ネズミがチョロチョロ出ばってのぞいていた。
坊ンさんは、
『そうだ、こいつをでたらめに言ってやれ』
と、思って、
オンチョロチョロ、出られっけ。
と、読んだら、ネズミはおどろいて、そこらをキョロキョロ見まわした。
また、それをお経にして、
スットンキョウの、キョウロキョロ。
と、読んだ。すると、ネズミはたまげて、穴の中へ逃げこんだと。それを、また、お経にして
シッポに帆かけて、スタコラサッサ。
と、読んだ。
次の朝、坊んさんは早々に帰っていかれたと。
その晩、婆サがお経を読んでいると、泥棒がしのびこんだ。泥棒は、めぼしいものを大風呂敷(おおぶろしき)につつみ、それを背負(せお)って部屋から出ようとすると、
オンチョロチョロ、出られっけ。
と、言う声がした。
泥棒は、びっくりしてキョロキョロ見まわした。すると、続けて、
スットンキョウの、キョウロキョロ
と、言うので、泥棒は、
「これは、おらが入ったことを知られているようだ。いや、こら、きびが悪いな。こんげなところにいられねぇ」
と、逃げかけると、
シッポに帆かけて、スタコラサッサ。
と、またまた声が追いかけて来た。
つかまえられたら一大事だと、泥棒は盗(と)った荷物(にもつ)をほうり出し、尻に帆を掛けて、逃げに逃げたと。
とっちぱれ。
オンチョロチョロ出て来られ候 オンチョロチョロ何やら囁かれ候 オンチョロチョロ出て行かれ候 泥棒は命からがら逃げ出したとさ
すごく笑えました。
オンチョロチョロのほうがおもしろいですね。( 20代 / 男性 )
むかし、あったけど。あるところに爺さまがあって、山の中で働(はたら)いていたと。せい出して働いていたら帰り時をあやまったと。じきに暗くなって、爺さま道に迷って困っていると、向こうの方に灯(あかり)がテカン、テカンと見えた。
むかし、あるところにお爺さんとお婆さんがおった。あるとき、隣から餅を七つもらった。夜も更けて、天井にぶら下げたランプの下で、餅を盛った皿を真ん中に、お爺さんとお婆さんが向かい合って座っていた。
むかし、新潟県の佐渡島では、ときどきとてもつもなく大っきな蛸が浜辺にあがってきては、馬にからみついたりして、悪さをしたそうな。あるとき、大佐渡の男が馬をひいて相川という賑やかな町まで買い物に出たと。
「ねずみ経」のみんなの声
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