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とくぞすのつかい
『とくぞすの使い』

― 宮崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 比江島 重孝

 むかし、むかし、日向(ひゅうが)の国、今の宮崎県(みやざきけん)日南市(にちなんし)飫肥(おび)の報恩寺(ほうおんじ)というお寺(てら)に、“とくぞす”という知恵者(ちえもの)の小僧(こぞう)どんがおったっと。
 ある日のこと、寺の和尚(おしょう)さんから、
 「よい、とくぞす、お前すまんが、清武(きよたけ)の庄屋(しょうや)どんかたまで使いに行ってくれ」
と、頼(たの)まれた。とくぞすは、
 「よしきた」
と、お寺をとび出して、すたこら、すたこら清武村へ急(いそ)いだと。


 飫肥から清武までは、まる一日の遠出(とおで)になる。清武にとくぞすが着くと、庄屋どんは、さぞ腹(はら)がへっただろうと、
 「やあ、とくぞすに、早う飯(めし)をやりめせ」
と、言うた。
 庄屋どんかたの下女(げじょ)は、
 「さあ、とくぞす、ぎょうさん食うてくだされ」
と、なんばいもおかわりをしてくれた。
 ところが、とくぞすは、飯を腹いっぱい食べおわると、長押(なげし)の上にあげてある槍(やり)をとりあげて、
 「庄屋どん、やり召(め)してもどるぞ」
と言うた。
 あわてた庄屋どん、庭(にわ)にとび出してきて、
 「ならん、とくぞす、そん槍はくれることはできん」
と言うた。


 すると、とくぞす、平気な顔で、
 「さっき庄屋どんは、やりめせと言うたじゃねえか」
と言うた。
 「そうか、そうじゃったか。これはしもうたわい」
 庄屋どんは、頭をさげてニガ笑(わら)いをした。

 そしてから、
 「よい、とくぞす。和尚さんの用事(ようじ)は、なんと言うたんじゃ」
と、聞いたと。
 とくぞすは、心のなかで「しもうた」と思うた。あわててお寺をとび出してきたので、和尚さんに用事を聞き忘(わす)れてきたのだと。


 が、そこは知恵者のとくぞす。素知(そし)らぬ振(ふ)りして、
 「庄屋どんが飫肥にきて、用事を聞いてくれじゃげな」
と、言うた。
 さすがの庄屋どんも、これにはかぶとをぬいで、
 「とくぞす、まこちお前はとんちがええわい」
と、笑うたと。

  米ん団子(だんご)。

「とくぞすの使い」のみんなの声

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