― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、あったと。
あるところに金持ちの欲深(よくぶか)爺(じじ)と婆(ばば)がいたと。
ある晩(ばん)げのこと、旅の六部(ろくぶ)がやって来て、
「どうぞ、ひと晩泊(と)めて下さい」
と頼(たの)んだと。
欲深婆は、汚(よご)れた身成(みな)りの六部をひと目見て、
「今夜、泊まり客(きゃく)があってだめでがす。隣(となり)さ行ってけろ」
と、すげなく断(ことわ)ったと。
その隣に貧乏(びんぼう)な爺さんと婆さんが住んでいたと。気の毒(どく)な六部を見て、
「何のお構(かま)いも出来ねえけんど、どうぞお泊まんなさい」
と、快(こころよ)く迎(むか)え入れたと。ほして、残りご飯を温(ぬく)めてご馳走(ちそう)したと。
次の朝ま、婆さんが早々(はやばや)と起きて朝ご飯の仕度(したく)をして待っていたが、六部はなかなか起きて来ないのだと。
心配になって、障子(しょうじ)の穴からそおっとのぞいて見たら、布団(ふとん)の上には、六部ではなくて大きな牛の形をした金のかたまりが、ピカピカ光って寝てあったと。
貧乏な爺さんと婆さんは、いっぺんに大金持ちになったと。
隣がにわかに福々(ふくぶく)しくなったのを見た隣の欲深婆が、
「どうして金もうけしたや」
と聞いたと。
爺さんと婆さんは、六部を泊めたら金の牛になっていたと話したと。
ほしたら、欲深婆が、
「おら家(え)も、今度六部が来たら必(かなら)ず泊まってもらうべ」
と言うたと。
欲深爺と婆は、毎日門口(かどぐち)に立って、旅の六部が来ないものかと待ち構(かま)えていたと。
ほしたらある日、汚(きたな)げな六部がやって来たので、
「六部さん、六部さん、今夜ぜひ、おら家さ泊まってけろ」
と言うて、無理やり手を引っ張(ぱ)って、家に入れたと。
ほして、残り物を集(あつ)めて、冷(ひや)っこいまんま食わせ、
「六部さん、六部さん、疲(つか)れたろうから、早よ休め」
と、冷っこい煎餅布団(せんべいぶとん)に寝かせたと。欲深爺と婆は、
「まんだ金の牛になってねか」
「いんや、まだなってね」
「まだか」
「まだだ」
と言うて、何遍(なんべん)も何遍ものぞいて見たと。
いくら経(た)っても金の牛になっていないので、二人で神棚(かみだな)の前にぺタッと座(すわ)って、
「あの六部が、早く金の牛になりますように」
「んだ、ピカピカ光る金の牛になりますように」
と、拝(おが)んでいたと。
ほしたら、舌(した)がだんだん回(まわ)らなくなってきて、よだれがベロベロ流れて来たと。
ほのうち、頭から角(つの)がニョッキリ生(は)えてきて、欲深爺と婆の方が牛になってしもうたと。
こんで えんつこぱあっと さげた。
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江差(えさし)の茂二郎(しげじろう)て人、あるとき、山さ行(え)たわけだ。 官林(かんりん)の山の木を盗伐(とうばつ)すると山役人にとがめられるども、わいろをつかまえさせると御免(ごめん)してもらうによいという評判(ひょうばん)であった。
昔、昔。一人の山伏(やまぶし)居(え)だけど。何時(えじ)だがの昼間時(じき)、一本松の木の下歩いて居たけど。ちょこっと見だば、その木の根っコさ小さな狸(たぬき)コ昼寝(ひるね)して居だけど。
「牛になった爺婆」のみんなの声
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