鬼に向かってお尻を叩くと嫌がるなんて初めて聞きました!びっくり!!それで鬼が逃げ帰ってくれるのはいいですね!( 30代 / 女性 )
― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに爺さんと娘とが暮らしていた。
あるとき娘が畑仕事をしていると、そこへ鬼がやってきて、娘をさらって行ってしまった。
爺さんは、くる日もくる日も娘を捜(さが)し、訪(たず)ね歩いたと。何年も経ったと。
奥山(おくやま)のそのまた奥山の、鬼の棲(す)むという岩山(いわやま)を登(のぼ)っていたら、鬼が山の上から現われて、爺さんもつかまったと。
鬼の館(やかた)につれられていくと、なつかしい娘がいて、鬼の奥方になっていた。息子(むすこ)も一人出来ていたと。
その息子は首から上が鬼だったと。
鬼は爺さんを釜(かま)の中に入れて、息子に、
「釜焚き(かまたき)するから、火を持ってこい」
というた。
その息子はまだ年端(としは)もいかないのに利口(りこう)な子で、火を持ってこいといわれて、薪(たきぎ)を焚(た)く火ではなく、機(はた)を織るときの杼(ひ)を持ってきた。
「それでない、別の火だ」
と怒られて、今度はムシロを打つ杼を持ってきた。
「なんにも分らないやつだ。もういい、俺がとってくる。お前はここで見張っていろ」
というて、鬼は向こうへ火を採(と)りに行ったと。
そのすきに息子は釜の中の爺さんに、
「今のうちに逃げて」
と、声をかけた。
爺さん、すぐに釜から出て、娘と息子を連れて山を下った。
そうとは知らない鬼が、火を採って戻ってみると息子がいない。
「しょうがない奴だ、また遊びに行きおってからに」
というて、釜の下の炉(ろ)に火を着けた。
しばらくたって、釜の湯がグラグラ、グラグラ沸いたので、
「爺め、もう煮えたろう」
というて、フタを取ったら、なんと、爺が入っていなかった。
「やろう逃げたなぁ」
というて、館の中を捜したら、娘もいない。
あわてて、山を駆(か)けおりた。
爺さんと娘と息子は、逃げて、逃げて、逃げて、山のふもとの大きな川を舟で渡り終えた。
ほっとしていたら、鬼がもう向こう岸へ、来ておったと。川をこいでやって来る、その速いこと。ザンブ、ザンブ、ザンブって追いつかれそうになったと。爺さん、あわてて、
「みんな尻(しり)を出せ」
というて、尻を鬼の方に突き出して、ピタピタ尻たたきした。
鬼は人間の尻たたきが嫌いなんだそうな。
「これはたまらん」
というて、あきらめて帰って行ったと。
爺さんと娘と息子と三人で家に帰り着くと、その日がちょうど正月元旦だった。
爺さんは竹を切ってきて、急ごしらえの門松(かどまつ)を立てたと。
そしたら、息子の頭に角(つの)が生(は)えていたので、息子は門松が恐くて門をくぐれなかった。
爺さんが門松のおさえにしている木で、息子の角をこすったら、角がポロリともげた。
お正月の門松のささえに立てる木や、門に太い薪を二本寄せかけておくのを、「鬼木(おにぎ)」とか「鬼打木(おにうちぎ)」というのは、昔にこんなことがあったからなんだと。疫病(えきびょう)や鬼を打ち払う為なんだそうな。
えんつこもんつこさげえた。
鬼に向かってお尻を叩くと嫌がるなんて初めて聞きました!びっくり!!それで鬼が逃げ帰ってくれるのはいいですね!( 30代 / 女性 )
むかしむかし、ある村に東の家と西の家とがあったと。東の家は長者どので、大っきな屋敷(やしき)に蔵(くら)もあり、子沢山(こだくさん)だったと。西の家…
むかしは染物(そめもの)をする店を普通(ふつう)は紺屋(こうや)と呼んだがの、このあたりでは紺屋(くや)と呼んどった。紺屋どんは遠い四国の徳(とく)島からくる藍玉(あいだま)で染物をするのですがの、そのやり方は、藍甕(がめ)に木綿(もめん)のかせ糸を漬(つ)けては引きあげ、キューとしぼってはバタバタとほぐしてやる。
「鬼打木の由来」のみんなの声
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