不思議な話〜!( 10歳未満 / 男性 )
― 高知県香南市夜須町 ―
再話 市原 麟一郎
整理・加筆 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子
ちょっと昔の話。
高知県香南市夜須町(こうちけんこうなんしやすちょう)の弥作(やさく)さんというお人が高知へ行って、帰ってくるとき、むかしは歩きよりましたろう。ほんで、家に帰り着いたのが夜中時分じゃったそうな。
弥作さんのところは、家が二軒(にけん)並んじょって前が田芋畑(たいもばたけ)になっとった。そこを通って自分の家の戸に手を掛けようとしたところが、ひょっとおかしな気がして、隣(となり)の家の方に目をやると、隣の家の雨戸(あまど)の節穴(ふしあな)から、火の玉がひとつ、ふわっと抜け出すのが見えた。
挿絵:福本隆男
火の玉は田芋畑の田芋が植(う)わっちょる上を二、三回、くるくるっと回(まわ)って、また家ん中へすうっと入った。
弥作さんは、ありゃと思うた。
「こりゃおおごとじゃ。昔から人が死ぬるとき、その家の軒(のき)から火の玉が出るというきに、こりゃ、ここの家に死人が出たやらしれん。早う行ってみてやらにゃ」
と、隣へ行きかけたら、また、雨戸の節穴から火の玉がすうっと出てきよった。
くるくると田芋畑の上を回って、また、すうっと家ん中へ入っていく。
弥作さんは震(ふる)えあがって、こりゃいかん、表口(おもてぐち)はいかんぞ、火の玉にとびつかれたらかなわん、と思うて裏手(うらて)へまわった。
それでもよう行かんで首を伸ばして様子を見とったが、裏口からは火の玉が出んようなので、戸口に近寄ってみた。家ん中はシンとしとる。
「こりゃいかん。家じゅう死によったか」
と思い、戸も割れんばかりにドンドン叩(た)いた。
「おおい、久助(きゅうすけ)、起きてくれぇ。おおい、ここ早う開けぇ。生きちょるんかぁ」
と、でかい声でどなりよった。
すると、寝呆(ねぼ)けた声で、主人の久助さんが、
「やかましいなぁ、どうしたことなら」
というのが聞こえ、戸がガラリと開いた。
「久助、おんしゃ生きちょったか」
弥作さんはホッと胸をなでおろしてから、たった今、田芋畑を火の玉が飛んどった話をした。
「妙なことや。うちにゃ死人も病人もおらんが、確かに田芋畑か」
「おお、田芋畑の上を、くるくるっと、こう……」
「そんならその火の玉は、おらのかもしれん」
久助さん、身をぶるっと震(ふる)わしてから
「そう言われてみると、確かにおらあ、今夢を見とった。田芋畑に細い月が出よって、芋の葉が揺(ゆ)れちょるその上を遊びゆう夢じゃったが、ほなら、おらの魂が抜け出たのかや」
というた。
挿絵:福本隆男
弥作さんに起こされんかったら、久助さんな、そのまま死によったんじゃろうか。
それとも、ただの浮遊魂(ふゆうこん)なんじゃろうか。
むかしまっこう 猿まっこう
猿のつびゃぁぎんがりこ。
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ちょっと怖い。魂が抜けていたままだったら...( 10歳未満 / 女性 )
むかし、あるところに子供のおらん爺(じ)さまと婆(ば)さまがおった。 爺さまは、毎日山へ柴(しば)を刈(か)に出かけたと。 ある日のこと、いつものように山で柴を刈っていると、のどが乾(かわ)いた。
「抜け出した魂」のみんなの声
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