― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
若(わか)い頃(ころ)、おら毎日、鰻(うなぎ)を釣りに行きよった。川の堤防(ていぼう)の石垣(いしがき)に穴(あな)があったが、下から十三番目の穴だけは餌(えさ)を近づけたら『がぼっ』と取られてしまう。
おら、腹(はら)が立つやら気味(きみ)が悪(わる)いやらで文次おじいに話したら、
「やめちょけ、あれは極道鰻(ごくどううなぎ)じゃ」
と言う。
「極道鰻は川をのぼってきて手頃(てごろ)な穴を見つけたら二度と出てこん。穴から首だけ出して餌がきたら食(く)うだけや。それも初(はじ)めの四、五年はまだ釣りようもあるが、そのうち体が穴いっぱいに大きゅうなり、出るにも出られんようになってくる。そんな鰻を釣ろうち言うたって、そりゃ無理(むり)ぜよ」
と言うが、そんなことでへこたれるおらじゃない。
早速(さっそく)魚屋へ行ってゆで鮹(だこ)と鉤(かぎ)っこを買(か)い、物干(ものほ)し竿(ざお)にくくりつけて穴に近づけた。
ほいたら、たちまち『ガボッ』と鉤っこはとられ、物干し竿も付(つ)け根(ね)から折(お)られてしもうた。これにゃあ驚(おどろ)いた。
けんど、それ位のことでひっこむおらじゃない。もう一度魚屋へ行って鮹と鉤っこを買うて、孟宗竹(もうそうだけ)にくくりつけて穴へ持って行った。
すると性懲(しょうこ)りもない奴(やつ)よ、『ガバッ』と食いついてきた。どっこい今度は食い逃(に)げはさせん。
「うんし、うんし」
引(ひ)っ張(ぱ)ったが出てこん。
かれこれ一時間引っ張ってへこたれかけたとき、伝吾(でんご)と又吉(またきち)が来た。
「おんしゃ、そこで何しよりゃ」
と聞くので、
「おら、鰻を引っ張り出しよる」
「やちもない。おんしゃ、カワウソに化(ば)かされちょるろうが」
と言うき、
「ほんなら、おんしらあも引っ張って見よ」
言うたら、伝吾も又吉も孟宗竹の竿を引っ張てみて、
「こりゃ、えらいことじゃ。三人じゃ引き出せんぞ」
と又吉が村へ走(はし)って帰って、十人ほど連(つ)れて来よった。
そうして大けな綱(つな)を持って来て、
「それひけ、よいしょ、それひけ、よいしょ」
と、力(ちから)を合わせて引っ張るうちに、さすがの極道鰻も、じわりじわりと出てきた。
いや、その大きかったこと。口じゃ言えん。何せ、鰻を引き出したら、堤防の石垣がぐさっと崩れよったけんのう。
むかしまっこう 猿(さる)まっこう
猿のつびゃあ ぎんがり。
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むかし、あるところに富山(とやま)の薬屋があった。 富山の薬屋は全国各地に出かけて行って、家々に置き薬していた。一年に一回か二回やって来て、使った薬の分だけ代金を受け取り、必要(いり)そうな薬を箱に入れておく。家の子供(こども)は富山の薬屋がくれる紙風船を楽しみにしたもんだ。
昔、あるところに、やることなすことどこかずれてしまう小僧がおったと。 ある日のこと、主人が、 「今日は山に行って木を伐って来い」 といいつけて、焼き飯を持たせてやったと。
「ごくどう鰻」のみんなの声
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