民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 世間話にまつわる昔話
  3. 丹波の一時餅

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

たんばのいっときもち
『丹波の一時餅』

― 鹿児島県 ―
語り 井上 瑤
再話 田畑 英勝
整理・加筆 六渡 邦昭

 昔は丹波(たんば)の一時餅(いっときもち)というのを食べると、すぐ馬になる、という諺(ことわざ)があった。
 それにはこんな由来があるのだそうな。

 昔、ある家にばくりょうが馬買いにやってきた。急の来客だったが、その家(や)の人が一時の間に餅をつくって食べさせたそうな。
 すると、その餅とお茶とを食べたり飲んだりしているうちに、そのばくりょうが、なんと馬になってしまったそうな。
 馬になって馬小屋の中に入ってしまったと。

 
 そのばくりょうの帰りがあまりに遅いので、友達が捜しに来てみたら、この家の馬小屋にいる馬がばくりょうの変化(へんげ)した姿だと判った。
 「これは不思議なことだ。
 なんとか元に戻す方法はないものか。」
と思い、易者(えきしゃ)のところへ行って占ってもらった。
 
 〽 丹波の国の一時餅よ
と言うて、鐘(かね)を叩いたところが、その返事は、神様が、

 〽 それを食べると、じきに馬になるぞ
と言ったそうな。


 〽 それが養生(ようじょう)はないか
と、その友達が聞いたところ、

 〽 それが養生は、三月三日のふつぃだぐじゃ
と言うた。「ふつぃだぐ」とは蓬団子(よもぎだんご)のことだ。


 それで三月三日にふつぃだぐを作って食べさせたところが、たちまち元どおりの人間になったと。
 それで三月三日には必ずふつぃだぐを食べるのだそうな。

 そしこんむかし。

「丹波の一時餅」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

瓜子ノ姫子(うりこのひめこ)

むかし、あるところに爺様(じさま)と婆様(ばさま)とがあった。子供がないので、欲しい欲しいと思って神様に願(がん)かけしたと。ある朝、瓜畑(うりばた…

この昔話を聴く

時鳥の兄弟(ほととぎすのきょうだい)

 昔、あるところに兄弟があったと。  兄は病気で目が見えなくなり、食べ物を探しに行けなくなったと。  弟は、一人で食べ物を探しにきては、兄にいいところを食べさせ、自分はまずいところばかり食べていたと。

この昔話を聴く

坊さまの宿乞い(ぼうさまのやどごい)

むかし、あるところに薪(たきぎ)が少なくて大層(たいそう)難儀(なんぎ)している村があったと。ある冬の夕暮れどき、その村へ一人のみすぼらしい坊さまが…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!