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かめにまけたうさぎ
『亀に負けた兎』

― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 兎(うさぎ)と亀(かめ)の話は知(し)っているね・・・・・・兎が負(ま)けたやつだ。
 でも、このあと負け兎がどうしたかは、余(あま)り伝(つた)わってない。
 今週は、その続(つづ)きを話そうかの。
 

 兎は負けて村へ帰ってくるとな、兎村の村長(そんちょう)に、
 「お前みたいな恥(はじ)さらしは、村へ置(お)く事は出来ん。出てけえ」
と、村を追(お)い出されてしまったんじゃ。
 負け兎は、しおらしおら出て行った。

亀に負けた兎挿絵:こじま ゆみこ
 
 
 それからしばらく経(た)ったある時、山の狼(おおかみ)から兎村へ使いが来て、
 「仔兎(こうさぎ)を三匹(さんびき)献上(けんじょう)せよ。さもなくば皆殺(みなご)し」
と、言う。

 さあ大変(たいへん)。村中は大騒(おおさわ)ぎになった。で、長い耳をおっ立てて、何日も相談(そうだん)ぶったが決まるもんじゃない。
 そらそうじゃ、誰(だれ)しも俺(わ)が子は可愛(かわい)いからの。
 負け兎がこれをききつけてな、
 「よし、一丁(いっちょう)俺(おい)らがやってみるか」
と、おずおず村へ戻(もど)って来た。そして、
 「俺らが仔兎を献上せんでもいいようにしたら、また村へ帰ってもいいか」
と言った。兎村の村長も、
 「お前が本気(ほんき)でそうしてくれるならば、仲間(なかま)に入れてやろう」
と、約束(やくそく)してくれたので、負け兎はさっそく山の狼の所へ出掛(でか)けて行った。

 そして狼の前へ出ると、
 「狼さま、お前さまは仔兎を三匹献上せよと言うことですが、お前さまの顔があんまり恐(こわ)いもので仔兎がおびえておるんじゃ。ついては、申(もう)し訳(わけ)ないのですが、崖(がけ)の上であっち向(む)いてちょこっと座(すわ)ってておくんなさい。そうせば今すぐ連(つ)れて参(まい)りますから」
 狼はこれを聞くとさっそく崖の端(はし)行って、あちらを向いて座った。
 
亀に負けた兎挿絵:こじま ゆみこ

 「これでいいかあ」
 「は、はい、今すぐに」
と、言いながら負け兎は狼の後(うし)ろにしのび寄(よ)り、
 「今だ!」
と、力(ちから)いっぱい狼の背中(せなか)を蹴飛(けと)ばした。
 さすがの狼も、もんどり打(う)って谷底(たにそこ)へ落(お)ちてしまった。

 負け兎は、得意顔(とくいがお)で村へ帰って来るとこの話をした。
 村長達が半信半疑(はんしんはんぎ)で谷底へ行ってみると、狼は腹(はら)をとんがった岩(いわ)にぶっさして死んでおった。
 こうして、亀に負けた兎は、また仲間達の村に戻ることが出来たそうな。

 本当はこの続きもあるんじゃがの、また、兎と亀が競争(きょうそう)して今度は兎が勝(か)つ話なんじゃが、それはまたの機会(きかい)にすべえ。

  こんでちょっきり、一昔。

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