― 岩手県 ―
                                
                                                                                                                                                        語り 井上 瑤
                                                                                                                                                                                                                                            再話 六渡 邦昭
                                                                                                                                                                                                                                                                    
                            
                             むかしあったと。
 烏(からす)は元々悪たれな鳥だったと。
 人が丹精(たんせい)かけて蒔(ま)いた種子(たね)を掘り返したり、藁屋根(わらやね)の破風(はふ)を荒したり、いたずらばかりしていた。
 神様これにほとほと手を焼いていて、いつか懲(こ)らしめてやろうと思われていらっしゃったと。
 そしたらあるとき、神様のところへ烏がものたずねにやってきた。
 「神様、神様、ちょっくら教えて欲しい事あって来ました。おれ、好きな女烏(めがらす)出来たんで、巣をかけようと思うども、今年は風が荒れますべぇか、荒れなかべぇか。どっちでございますべぇか」
と、お伺(うかが)いをたてたと。 
                            
                 
 その年は嵐がたびたび起こる年だったが、神様はわざと、
 「今年は上々の日和(ひより)だ」
と、反対を教えたと。
 これを聞いた烏は喜んで、見晴らしのいい高い木の梢(こずえ)に巣を作ったと。
 いい巣をかけたので、好きな女烏を呼んでこようとしていたら嵐が吹き荒れた。梢にかけた巣は、大揺れに揺れた。女烏は、
 「アホー」
というてあきれたと。
        
                            
                            
 それからというもの、烏は大風が吹く前になると巣が壊れるのが心配で、梢のまわりを、
 「ガオ ガオ」
と、声からして啼(な)いていたと。
 この様子を見た農家の人たちは、
 「梢に烏群(む)れ啼くは嵐の前兆(ぜんちょう)」
というて、そなえをするようになったと。
 どんとはらい。 
                            
                
 
挿絵:福本隆男
        
                            
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むかし、あるところに子供のおらん爺(じ)さまと婆(ば)さまがおった。 爺さまは、毎日山へ柴(しば)を刈(か)に出かけたと。 ある日のこと、いつものように山で柴を刈っていると、のどが乾(かわ)いた。
昔、あるお寺に一人の和尚がいた。あまり裕福でもないので小坊主も置けないから、一匹の蛇をあずかって置いた。いつも外出するときには、蛇に今出て行くと告げるし、帰って来れば、また帰ったと言う
「梢で啼く烏」のみんなの声
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