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じさまとかに
『爺さまとカニ』

― 新潟県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子

 むかし、あるところに子供のおらん爺(じ)さまと婆(ば)さまがおった。
 爺さまは、毎日山へ芝(しば)を刈(か)に出かけたと。
 ある日のこと、いつものように山で芝を刈っていると、のどが乾(かわ)いた。
 「ちょっくら谷へおりて、水でも飲(の)むか」
 爺さまが、谷川の水を掌(て)ですくって飲もうとしたら、小っこいカニが一匹(いっぴき)、コソコソッと寄(よ)ってきた。

 
爺さまとカニ挿絵:福本隆男

 「おおう、かわいげなカニだのう」
 爺さまは、あんまりかわいいカニなので、家に持って帰り、庭(にわ)の池に放(はな)しておいた。


 それからというもの、山から戻(もど)ると、必ず、
 「カニ、コソコソ。爺だ、爺だ」
と声をかけた。するとカニは、爺さまの声がわかるのか、コソコソッと池の中から這(は)い出てくる。
 爺さまが山からとってきたエサをやると、ハサミでちょこっとつかんで、また池の中に潜(もぐ)っていったと。
 毎日がこんな調子だったから、面白(おもしろ)くないのは婆さまだ。
 「爺さまは、カニにばかりにうめぇもん食わせて、おらには何にもくれん」
と、ぶつぶつ、ぶつぶつ、怒(おこ)ってばかりおった。


 そんなある日、
 爺さまが山へ行ったあと、婆さまはカニの池にやってきた。そして、爺さまの声をまねて
 「カニ、コソコソ。爺だ、爺だ」
と言うた。
 するとカニは、爺さまだと思うて、池の中から、コソコソッと這い出てきた。
 婆さまは、おっかねぇ顔をして、
 「このカニめが!」
と、カニをつかまえ、台所(だいどころ)に行ってゆでて食べてしもうた。
 残(のこ)ったカニの甲羅(こうら)は、裏(うら)の畑にポーンとうっちゃっておいた。


 晩方(ばんがた)、爺さまは山から帰ってきて、いつものように、
 「カニ、コソコソ。爺だ、爺だ」
と呼(よ)ばったが、カニは出てこん。もう一度、
 「カニ、コソコソ。爺だ、爺だ」
と言うたが、今度も出てこん。
 「はてな。どうして出てこんのじゃろ」
と思いながら、家に入り、
 「婆さま、婆さま。おらのカニ、知らねか」
と聞いたら、婆さま、
 「カニなんか、なんで知るや」
という。
 「本当に、知らんか」
 「知らんもんは知らん」
 するとカラスがバタバタッと柿(かき)の木にやって来て
  カニの身は 婆さのハラ
  甲羅は 裏の畑
というて啼(な)いた。

 
爺さまとカニ挿絵:福本隆男

 爺さまがあわてて裏の畑へ行ってみると、カニの甲羅が捨ててあった。
 「おらのカニ、婆さまに食われてしもうた」
というて、爺さまはせつなそうに泣いておったと。
 
 いちがポーンとさけた。

「爺さまとカニ」のみんなの声

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