― 広島県 ―
語り 井上 瑤
再話 垣内 稔
整理・加筆 六渡 邦昭
むかし、むかしあったげな。
ある旅の商人(あきんど)が大けな荷物を肩(かた)にかついで、丸太の一本橋の上を渡(わた)ろうと思いよったら、向こうからもひとりのお侍(さむらい)が渡りょったげな。
旅の商人は、
「どうしたもんかいのう。ふたりは渡らりゃせんけぇ、待っとらんにゃいけんが」
と思うて、待っちょったげな。
ほしたら、橋ぅ渡りょったお侍が、ふらふらっとゆれて、ぶらんと橋の下へぶらさがったげな。
旅の商人は、たまげてそばへかけよると、落ちそうになっとるお侍の手をしっかりつかまえちゃったんじゃげな。
橋の下は、そりゃものすごい崖(がけ)っぷちじゃたげなで。
その次を話そうか、話すまいか。
ン、話せてか。そうか、はなしていいんじゃな。ンでは。
旅の商人は、ぎゅっとにぎっとった手をはなしたもんじけぇ、お侍はどぷんと崖っぷちへ落ちて、死んだげ な。
それでしまいよう。
なんまんだぶ なんまんだぶ。
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とんと昔があったげど。嘘こきさざなみは、いつも嘘ばっかり言うているので、地獄(じごく)のえんま様が、「嘘こきさざなみは娑婆(しゃば)におくと、為(ため)にならんすけ、地獄へつれてこい」と鬼どもに言いつけたと。
「話そうか話すまいか」のみんなの声
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