美濃では無く、飛騨地方の昔話ですね。 (大野郡・宮村は飛騨です)( 50代 / 男性 )
― 岐阜県 ―
語り 井上 瑤
採集 和仁 市太郎
再話 江馬 美枝子
資料 日本の民話9
むかし、美濃(みの)の国(くに)、今の岐阜県(ぎふけん)大野郡(おおのぐん)宮村(みやむら)の段(だん)というところに、猪野谷(いのや)という人がいたと。
この家に毎年燕(つばめ)がきて巣を作り、秋になると幾羽もの子燕を連れて、遠く南の国へ帰っていった。
それが親の代から続いていたと。
ある秋の朝、南へ帰る燕を見送りながら、
「つばめよ、お前たちぁ、永いうち俺(お)らん家(ち)へ来て巣を作って、子供をふやえて帰っていくが、お前たちも、ちっとはありがたいと思うろ。そんなら南の国から、何か珍しい土産でも持ってきてくれたらどうじゃな」
おやじは、別に土産が欲しかったわけではなかったが、そんなことを燕にいうた。
挿絵:福本隆男
雪にとじこめられた長い寒い冬が過ぎ、春になった。遅い桜が散って間もなく、いつものように燕は飛んできたと。
そして、いつものように土間(どま)の上の古い巣にとまると、口にくわえていた何かの種を、ポトンと落としてよこした。
「土産を持ってきてくれたのかよ。えらいすまなんだなぁ」
猪野谷のおやじは、燕がせっかく持ってきてくれたので、何の種だかわからないまま畑に埋(う)めた。
そして何が生(は)えるのか楽しみながら毎日たんせいしていたら、黄色い花が咲いた。
「なんたら大きい花じゃろ」
驚いているうちに実になったと。南瓜(かぼちゃ)だったと。
ずんずん大きくなって、まだまだ大きくなるようす。村人たちも、
「どえらい大きな南瓜じゃな」
「どでかい奴じゃなぁ」
と、みなみな呆(あき)れ顔だ。
秋になると、十貫近くの大南瓜になったと。
猪野谷のおやじはよろこんで、さっそく鉈(なた)で割った。そしたらなんと、中に小さな蛇(へび)がいたと。
鉈(なた)で割るときに、どうやら片目を切ったらしく、小蛇は片目になって、どこかへ姿を消したと。
挿絵:福本隆男
燕の帰っていく南の国では、この小蛇がおいしいご馳走だったと。
それで燕は、はるばる土産に持ってきてくれたのだったが、猪野谷のおやじにはそれがわかるはずもない。
宮村(みやむら)の段(だん)には、今でも片目の蛇がいるが、村の人たちは「猪野谷へんべ(蛇)」と呼んでいる。
しゃみしゃっきり 鉈柄(なたづか)ぽっきり。
美濃では無く、飛騨地方の昔話ですね。 (大野郡・宮村は飛騨です)( 50代 / 男性 )
蛇がなぜ
へびが美味しい?!( 10代 / 女性 )
か、か、片目の蛇?!( 10代 / 女性 )
むかし、あるところに大分限者(おおぶげんしゃ)で、とても話の好きな婆(ば)さまが住んでおられたそうな。その隣には、彦八(ひこはち)といって、こちらは…
「燕の土産」のみんなの声
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