仕返しってなんかひどすぎた ( 10歳未満 / 男性 )
― 福岡県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところにサルとカニがおったって。
あるとき、カニが河原(かわら)を散歩していたら握(にぎ)り飯がひとつ落ちていた。拾うて運んでいたら、サルが水飲みにやってきた。
「やぁ、いいもん拾ったな。どこに落ちてたや」
「そこだよ」
「おれもさがそ」
サルもさがしたが、握り飯はもう無くって、柿の種(たね)を一粒拾うた。
「カニ、カニ。おれ、柿の種を拾うた。これを蒔(ま)けば柿がいっぺぇなるが、おれ、それまで待てねぇ。今、腹(はら)ぁへってるだ。その握り飯とこの柿の種とを取り換(か)えっこしようや、どうだ」
「おら、やだな」
「そんなこと言わねぇで、なっ、そらっ」
「やだったら、やだ」
「よこせったら、よこせ」
サルは無理矢理(むりやり)横取りして、握り飯を食うてしまった。
カニは、柿の種を家の庭に植えたって。
水をやりながら、
「早く芽(め)が出ろ、早く芽が出ろ」
って言うたら、あれまっ、芽がもうニョキッて出てきた。
芽が出たら出たで、水やりながら、
「早く大きくならんと、ハサミ切る」
って言うたら、あれまっ、グングン伸びて木になった。
木になったらなったで、水やりながら、
「早く実がならんと、ハサミ切る」
って言うたら、あれまっ、枝もたわわに実がなった。
実がなったらなったで、水やりながら、
「早く熟(う)れんと、ハサミ切る」
って言うたら、あれまっ、あれよ、あれよという間にうまそうな色になった。
うまそうな色になったものの、カニは木に登れない。木の下で柿の実が落ちてくるのを待っていたら、そこへ、サルがやって来た。
「カニ、カニ、おれが柿の実をもいでやろう」
ってスルスルッと木に登って行った。
「サルどん、サルどん、早よう落としてくれろ」
「まあず、おれが塩梅(あんばい)みてやるから」
って、うまそうな熟れ柿ばかりもいで食うんだと。
「サルどん、サルどん。お前(めえ)ばかり食うてねぇで、おらにも落としてくれろ」
「うるさいなぁ。よし、ほうれ、これでも食らえ」
って、青い柿の実を投げつけた。
「いて、いて、いててぇ」
って、カニは穴に逃げ隠(かく)れたと。
穴の中から目ぇだけ出して見ると、サルは袋に柿の実を入れて木の枝にぶら下げている。
カニはくやしくてならん。それで、
「西の風ゴオッと吹け、東の風ゴオッと吹け」
って言うと、強い風がゴオッと吹いた。柿の実が入った袋が枝から落ちたと。
カニは、急いで袋を穴に運んだ。
サルは、あわてて木から下りて穴のところへ行き、
「おれの柿、返せ」
って言うた。
「おらのだ」
「種を拾うたのは、おれだ」
「育(おが)らしたのはおらだ」
「返さんと、穴にクソをたれこむぞ」
って、サルが尻を穴に向けた。そのとたんに、カニはサルの尻をハサミ切った。
「いて、いてててぇ」
サルは痛くて痛くて、山に逃げ帰ったと。
サルの尻が赤くて毛が生えなくなり、カニの手足に毛が生えるようになったのは、むかしにこんなことがあったからなんだと。
それぎんのとん。
仕返しってなんかひどすぎた ( 10歳未満 / 男性 )
教訓は、独り占めしてはいけないということです。( 20代 / 男性 )
「猿とカニ」のみんなの声
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