民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 大きな話・法螺話にまつわる昔話
  3. 最後のうそ

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

さいごのうそ
『最後のうそ』

― 福井県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに、とほうもない嘘つき爺がおったと。
 爺の若い頃、近所の人が嫁さんを世話しようとしたら、相手の娘っこに、
 「エ―あの人ぁ、そんなあ、うそでしょ、おらやんだぁ」
と言われたと。それからこっち、女房もなくずうっとひとりで暮らしておったと。
 あんまり嘘ばっかりつくので、村の人達もあきれて、だんだん相手にしなくなったと。
 だぁれも近づく者がいなくなると、嘘つき爺は、
 「嘘袋(うそぶくろ)がサビつきそうだ。あぁあ嘘つきてえなぁ」
と、毎日、ブッツンコブッツンコつぶやいておったと。

 
 あるとき、嘘つき爺が病気になって、とうとう死ぬばかりになったと。
 が、だぁれも見舞ってくれるものがない。
 そこで爺は、近所の衆や、親せきの者たちを集めて
 「おらは、まもなく死んでいくだ。皆の衆には世話になったで、小遣いをためた金が庭の柿の木の下さ埋めてあるのじゃ。それ、皆(みんな)で分けてくろ。それにしても、死ぬ前に熱い粥(かゆ)の一杯(いっぺエ)も食(く)いてえなぁ」
と言ったと。
 
 これを聞いた村の衆と親せきの衆は、
 「死ぬ際(きわ)まで、まさか嘘はこくめえ」
と、いろいろ介抱(かいほう)してやったと。
 嘘つき爺は熱い粥を腹いっぱい食べて死んでいったと。


 野辺送りもしてやってから、みんなは庭の柿の木の下を掘ったと。そしたら爺の言葉通りに小さい箱が出てきたと。
 「ちょっくら開(あ)けてみなんし」
 みんなは、ワクワクしてそのふたを取ってのぞきこんだと。
 そしたら、何とまあ呆れたことか

 ――うそのつきじめえ――

 と書いた紙切れが入れてあったと。

 そうらいべったり貝の糞
 かち栗数えてへんころへんころ

「最後のうそ」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

ある意味、立派!(笑)( 50代 / 女性 )

驚き

嘘つき爺は、どこまでも嘘つきだなと思いました。

こんなおはなしも聴いてみませんか?

からたち姫コ(からたちひめこ)

むかしむかし、あるところに爺さまと婆さまが住んでいたと。二人は、家の裏の畑に一本のからたちの木を植えて、それを子供替わりに大事に育てていたと。

この昔話を聴く

地蔵様と笠っコ(じんぞさまとかさっこ)

 昔、あったけど。  ある村さ、孫三郎(まごさぶろう)とお米(よね)と云(い)う年寄(としよ)った夫婦住んでだずおん。

この昔話を聴く

水乞鳥の不孝(みずこいどりのふこう)

むかし、あるところに、母と息子が二人で暮らしていた。母は息子を可愛(かわい)がっていたが、息子の方は少しも母の言う事など聞きはしない。その為に、母は…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!