― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 今村 泰子
むかし、あるところに『あくやのしろど』ていう仲の好(え)え夫婦(ふうふ)いてあったと。
して、どっち死んでも七年間は後添(のちぞえ)貰(もら)わねことに約束したわけだ。
したけ、嬶(かか)さんだ人死んでしまったと。お父さん、まんずお母さんに死なれたっけ、たいした不自由で、難儀(なんぎ)してたと。
友達方、毎日、後添えの嬶さん貰えとすすめにくるわけだ。
「なんと、あの嬶とだば、七年間は後添え貰わぬ事に約束してあった」
と、言ったども、あまり友達にすすめられるんてかに、とうとう仕方なく、後妻(あとかか)貰ったわけだ。
それからていうもの、毎晩げ、魂(たましい)来るとナ。
「あくやのしろどは うちにか
七年待てとの お約束 カラン、カラン」
て、来るわけだ。
あまりおっかねくて、おっかねくて、友達さ魂来るとてしゃべったと。
「魂なんて来るもんだてか。きっと狐(きつね)かむじなに相違(そうい)ない」
て、言って、その晩(ばん)げ、皆して待っていたと。
したけ、魂きたわけだ。
「あくやのしろどは うちにか
七年待てとの お約束 カラン、カラン」
て、真白な着物着て来て言うわけだ。
皆どてんしたども。
「それっ」
て、かかっていって、ぶっ殺してしまったと。
して、
「これヒャ、化物だこったば、朝日さ照(て)らせば分かる」
とて、朝日の昇(のぼ)るの酒コ呑(の)んで待って、して、朝日さ照らしたけ、古し狐(きつね)であったと。
それから、魂来ねぐなったと。
とっぴんぱらりのぶう。
挿絵:福本隆男
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「あくやのしろど」のみんなの声
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