民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 世間話にまつわる昔話
  3. 塞の神さまの借金

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

さいのかみさまのしゃっきん
『塞の神さまの借金』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、秋田県の下檜木内村(しもひのきないむら)の村はずれの塞(さい)の神さまは、山の神さまから借金があったと。
 ところが、返すと約束した正月の十五日が明日に迫(せま)ってきたというのに、銭(ぜん)こはさっぱり手元にないのだと。
 「この正月は、思いのほか賽銭(さいせん)があがらねがった。はて、どうすべかな」
 さすがの塞の神さまも、思案に暮れたと。
 「なんといいわけしたらいいべ。前から日は決まってたのに、今ごろ銭こ無えと言っても、勘弁(かんべん)してくれないだ……なんとしたらいいだべなあ」

 ※下檜木内村…現在の秋田県仙北市西木町桧木内 

 
 一晩じゅう考えていた塞の神さまは、ンダ、と膝(ひざ)をたたいた。
 そして、夜が明けるとさっそく、藁(わら)を山のように積みあげて火をつけた。藁は、ごうごうと燃えあがり、火の粉と煙を吹き上げた。 
 
塞の神さまの借金挿絵:福本隆男

 
 ちょうどそのとき、山の神さまが山道を、のっそら、のっそら、借金の催促(さいそく)にやって来た。塞の神さま、先手をとって、
 「やあやあ、山の神さま、よくおざってくれた。ところがこの通りの丸焼けで、借金返すどころでねぇのだす。ぶちょうほうだども、あと一年待ってけろ」
と言うて、ここぞとばかりにでっかいため息をついてみせた。
 こうなっては、いかな山の神さまでも返せとは言えん。
 「それは気の毒なことだ。だども、おめえは無事でなによりだった。せば、また来年の一月十五日に来るス」
と言うて、のっそら、のっそら帰って行ったと。
 塞の神さまは、次の年も、また次の年もそうやって、山の神さまにいいわけをしたと。

 
 それから下檜木内村では正月の十五日になると、塞の神さまのところへたきぎを集め、藁を積みあげてどんどと焼き、
 「火事」「火事」
と、はやしたてるようになった。
 こうやって塞の神さまの借金のいいわけの手伝いをするのだと。

 とっぴんぱらりのぷう。 

「塞の神さまの借金」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

神様が助けられて凄いです( 10代 / 男性 )

驚き

一般的には、神様が人の手助けをするのですが、これは人が神様の手助けをするのですね。 おもしろい話ですね。

こんなおはなしも聴いてみませんか?

犬猿の仲(けんえんのなか)

 むかし、あるところにお兄ちゃん犬と妹犬(いもうといぬ)があったって。  ある日のこと、二匹が連れだって歩いていたら、道端におむすびがふたつ落ちていた。

この昔話を聴く

爺はじっとしとれ、婆はバーッとしとれ(じいはじっとしとれ、ばあはばーっとしとれ)

昔むかし、ある所に爺さんと婆さんがおったそうな。爺さんは毎日山へ木ィ伐(き)りに、婆さんは川へ洗濯(せんたく)に行っていたと。あるとき、爺さんが山で…

この昔話を聴く

観音さま二つ(かんのんさまふたつ)

むかし、ある山奥に山姥(やまんば)が棲(す)んでおったと。山のふもとの村人が、山へ入って柴刈りや山菜採(さんさいと)りをしていると、どこからともなく…

この昔話を聴く

現在884話掲載中!