民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 偶然に宝を授かる昔話
  3. とっ付こうか ひっ付こうか

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

とっつこうか ひっつこうか
『とっ付こうか ひっ付こうか』

― 山口県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところにお爺(じい)さんとお婆(ばあ)さんが住んでおったそうな。
 あるとき、お爺さんは、山へ木を樵(き)りに行った。日暮れになってもカキンカキン樵っておったら、山の中から、
 「とっ付こうか、ひっ付こうか」
という声が聞こえてくるんだと。
 お爺さんは、ああ気味悪いと思ったけれども、知らぬ顔して木を樵っていた。
 するとまた、
 「とっ付こうか、ひっ付こうか」
と、言ってきた。


 『こんだけ年を取ったんじゃ。何が来ても、ま、恐れることはない』
 こう思って、
 「とっ付きたきゃあ、とっ付け。ひっ付きたきゃあ、ひっ付け」
と、言った。
 そしたら、身体(からだ)が重く重くなって来たと。
 「こりゃおかしなことじゃ。何がひっ付ただろうか、ひどく重たくなってきよった」
と、やっとこさで家へ帰って来た。
 「婆さんや、何か知らんがこんなにたくさんついたが、まあ、見てくれ」
 それで帯(おび)をといて見たところが、小判(こばん)がいっぱい身体にひっ付いている。
 「ありゃ、こげなええ物がひっ付いて。良かったのお、お爺さん」
 「ほんに、のお、お婆さん」
 言うて、二人で喜んでその小判をむしり取ったと。
 ところが、それを隣(となり)の欲深爺さんが見て、次の日、雨が降るのに山へ行った。


 真似(まね)をして木を樵っていると、日が暮れた頃、
 「とっ付こうか、ひっ付こうか」
と、聞こえて来た。
 これだ、これを待っていた、と、
 「とっ付きたきゃとっ付け、ひっ付きたきゃひっ付け」
と、言い返した。すると、ほんとに身体が重くなって来た。
 こりゃまあ、ごつい小判がひっ付いたぞ、一枚でも落しちゃあならんと思って、そろりそろり歩いて戻った。
 「婆さんや、まあ見てくれ。わしにも重たいほどひっ付いたで」
 「そうかえ、どれどれ」
と、婆さんが、まきの火を近づけてみると、何と、爺さんの着物に松やにやら、蛇(へび)やら、みみずやらが、いっぱい付いていた。 
 びっくりした婆さんが、おもわず火のついたまきを落したからたまらん。松やにに火がついて、欲深爺さんは身体中(からだじゅう)火だるまになって、とうとう死んでしまったそうな。

 これきりべったり ひらの蓋(ふた)。

「とっ付こうか ひっ付こうか」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

普段の行いが悪かったのかもしれないけど、それにしても欲深爺さんが焼死してしまうとは。ちょっと行き過ぎな気がします。 ( 40代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

またじろと和尚さん(またじろとおしょうさん)

昔、和歌山のお城下に珊瑚寺(さんごじ)というお寺があったんだと。そのお寺の本堂の床下(ゆかした)には ”またじろ” という狸が棲んでいたんだと。

この昔話を聴く

大根むかし(だいこんむかし)

むかしとんとんあったんだけど。ある村で、くる日もくる日も雨降らねで、どこの家でも大根、白菜(しろな)、なんだて野菜もの蒔(ま)いたげんど、ほとんど出…

この昔話を聴く

傘の絵(かさのえ)

むかし、あるところに長者どんがあったと。長者どんは大変物好(ものず)きな人であったと。それを聞きこんで旅の商人(あきんど)が一本の掛(か)け軸(じく…

この昔話を聴く

現在881話掲載中!