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しょうがつのうたよみ
『正月の歌詠み』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかし。あるところにお姑(しゅうとめ)さんと嫁(よめ)とお手伝いがいたと。
 
正月の歌詠み挿絵:福本隆男


 ある年のお正月に、お姑さんが、
 「今日は正月休みだ。正月にはお天子様(てんしさま)のところでは歌会(うたかい)をもよおすそうだが、ひとつ家(うち)でもやってみようかね」
というた。嫁が、
 「歌会にはお題(だい)というのを決めて、必ずそれを入れて詠(よ)むそうですが、何にします」
と聞いた。お姑さんが、
 「そうだねぇ、そんなら、歌の尻(しり)に必ず、二つ三つ四つと付けて詠むというのはどうかね」
というたら、嫁が、
 「変なお題」
というた。お姑さん、嫁にけなされてカチンときたと。


 「先(ま)ずは嫁、お前(め)からだ」
というたら、嫁は、この家に嫁(とつ)いでくる前にお姑さんからもらった手紙のことを歌にした。
  是非(ぜひ)嫁にと貰(もら)った文(ふみ)はうれしいが
   読めない文字が 二つ三つ四つ
お姑さん、ますますカチンときた。が、正月だから怒るわけにもいかん。そこで
 「次は俺(お)れが詠む」というて、
  やがてみな臑(すね)も太れば気も太る
   可愛(かわい)いさかりは 二つ三つ四つ
と、嫁の顔を見ながら詠んだ。
 嫁はにっこりして受け流したと。
 次はお手伝いの番になった。お手伝いは、
  たまさかに会(お)うたうれしさ夏の夜の
   汗をかきかき 二つ三つ四つ
と、すまして詠んだ。

 
正月の歌詠み挿絵:福本隆男

 お姑さんも嫁さんも、昔をなつかしむような顔になって、一ぺんに場がなごんだと。
 とーびんと。
 

「正月の歌詠み」のみんなの声

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