う~むつ~。感動+驚き+悲しい+楽しい。ぜんぶあるな~。今の日本は、贅沢過ぎて、自由の奴隷とも言うべき有様。?それに比べ日本人の心の基本がここにはあるかもな~。素直で、欲がない心。河童の化身が姉妹なのも、お坊さんが、その謎を解明するのも、空想の物語に現実を引き寄せる様で、そうでないようで・・・。欲深い心は必ず思うようにいかないって戒め。昔話は予言的でもあるな。( 60代 / 男性 )
― 山形県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに大きな沼(ぬま)があった。
沼の東のはずれに、兄と弟が隣(とな)りあって暮(く)らしてあったと。
兄は、沼のまわりの繁(しげ)り過(す)ぎた木の枝(えだ)を払(はら)ったり、草を刈(か)ったりしていたが、弟は、
「そんなことをやっても銭(ぜに)になるわけではなし、くたびれるだけだ。やめとけ、やめとけ」
というて、手伝わない。
あるとき、兄が沼の渕(ふち)で草を刈っていると、水の中から、めんこい娘(むすめ)があらわれて、
「毎日ご苦労さんです。なんぞお礼をしたいけれど、おら、何も無(ね)え。沼の西っ方におらの姉さまがいるから、この手紙を届(とど)けてくれんかや。そしたら、きっとお礼をしてくれっから。西の沼っ渕で掌(て)を三べん叩(たた)けば姉さま出はって来るから。な」
と、手紙を兄に渡(わた)した。
手紙というても、何も書かれていない、ただの一枚(まい)の紙っぺらだ。
兄は、何も書いていない手紙とは妙(みょう)なことだ、と思いながら、
「ほんでは、ひとつ行って来るべ」
というて、歩いて行った。
途中(とちゅう)に小川があって、丸太を一本渡してあった。兄、足をすべらせて小川に転落した。
「こりぁしまった。手紙がぬれてしもうた」
手紙を石の上で乾(かわ)かしていたら、何やら妙な文字が浮(うか)びあがってきた。兄には読めない文字だったと。
兄が首を傾(かし)げていたら、そこへ、旅の坊(ぼう)さまが通りかかって、その手紙を見た。
「兄さ、その紙どうしたや」
ときくから、
「はぁ、沼の東の娘から預(あず)かってきた。西っ方の姉さ届けに行くんだが、ここで転んでぬれたので乾かしているところだ」
というた。
「珍(めず)しい河童(かっぱ)文字で書かれているので尋(たず)ねたのだが……どれ、ちょいと読んでみようか。
なになに……、これはこれは……、兄さ、お前大変な難儀(なんぎ)さあうところだった」
坊さまが言われるには、手紙には、
「西の姉さまへまいる。
この男は、おらの沼っ渕(ぷち)の木や草を刈るんで、おらの隠(かく)れっ所だんだん無ぐなっさげ、憎(にく)くてなんねぇ。捕(と)って食いてぇけんども、おらが捕って食えば、ここに沼の主がいるって、じきに判(わか)る。そんで姉さまの方へやっから、何分よろしく捕って食ってござえ。
東の妹河童より」
と、書いてあるのだと。
坊さま、案じてくれて、
「そこらあたりから、南瓜(かぼちゃ)のつるを一本折って来ぉ」
というので、とってくると、その南瓜のつるの汁(しる)で別の紙に何やら文字を書いてくれた。
「この手紙を渡すとよい」
というて、坊さまは行ってしまわれた。
兄は喜んで、西の沼っ渕へ行って、掌(て)を三べん叩いた。
水の中から、きりょうの良え姉さま出てきたと。
「姉さまや、東の妹さまから手紙を預かって来もうした。ひとつ、読んでござえ」
「それは、それは、ご苦労さま」
というて、姉さまが手紙を水に浮かべた。
「なになに」と読んでいたけど、それには、
「西の姉さまへまいる。
この男は、毎日沼っ渕で木や草を刈って助けてもらっているから、何かお礼をして給(たも)れ。姉さまの持ってござらっしゃる金の宝臼(たからうす)がよかんべ。
東の妹河童より」
と書いてあったと。姉さまは、
「おらの宝物をやってくれなんて、本当に憎たらしい手紙だけんど、妹のたのみだからしょうがない。ちょっと待ってもうせ」
というて、水の中に潜(もぐ)って行って、小っさな金の宝臼をひとつ、兄に投げてよこした。
「一日一回ずつ廻(まわ)し申せェ」
と、くやしそうに叫んで、河童の姿になって水の中へ潜って行った。
兄は、それからは、宝臼を一日に一回だけ廻して黄金(こがね)を出し、福々しくなったと。
そしたら、隣の弟が、
「兄のやつ、なじょして福々しくなったべ」
と、障子(しょうじ)紙に穴あけて、こっそり覗(のぞ)いたと。
兄が宝臼を廻して黄金を出しているのを見て、
「おらにも、その臼貸(か)してござえ」
というと、兄は、
「ああ、いいとも」
と、貸してやった。
弟は欲(よく)の皮つっぱって、一度でたくさんの金を出すべとて、ぐるぐる、ぐるぐる廻した。
臼はぐるぐる廻って止まらなくなり、黄金が出たり入ったりして、ひとつもとれなかったと。
弟は腹(はら)立てて、臼を足で蹴(け)った。すると宝臼はブンと飛んで、沼に落ちて底に沈(しず)んでしまったと。
とっぴんぱらりのぷう。
う~むつ~。感動+驚き+悲しい+楽しい。ぜんぶあるな~。今の日本は、贅沢過ぎて、自由の奴隷とも言うべき有様。?それに比べ日本人の心の基本がここにはあるかもな~。素直で、欲がない心。河童の化身が姉妹なのも、お坊さんが、その謎を解明するのも、空想の物語に現実を引き寄せる様で、そうでないようで・・・。欲深い心は必ず思うようにいかないって戒め。昔話は予言的でもあるな。( 60代 / 男性 )
むかし、あるところに婆さまがあったと。 婆さま、田んぼへ行って草取りしたと。 昼どきになったので弁当を食うていたら、一匹の狐(きつね)が田んぼの畔(あぜ)の上をゆっくりゆっくり歩いて近づいてきた。
むかしあったと。 あるところに人里離れた寺があったと。 来る和尚さまも、来る和尚さまも、みんな何かの化物にとって食われて、次の日には居なくなってしまう。 村では、和尚さまが居なくては法事も出来ん。困っておったと。
「河童の手紙」のみんなの声
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