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ほととぎすのきょうだい
『ホトトギスの兄弟』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志

 とんとむかし。
 あるところに、兄と弟が住んでおった。あるとき、兄は病気になって、ちっとも働けんようになってしまった。それで、弟は、
 「あんちゃんの分まで、おれが働かないかんな」
と、毎日毎日、汗みどろになって働いていた。
 五月に入ると、山芋(やまいも)が食べごろになった。弟は、土深くうまっている山芋を掘(ほ)ってきては、
 「あんちゃんは病気だから、うまいとこを食ってけろ」
と、兄には山芋のうまいとこを食わせ、自分は皮やつるのまずいとこばかり食っていた。

 
 兄は、そんなことなど知らんから、はじめは、
 「うまい、うまい」
と、山芋を食っておったが、だんだん、
 「おれは働かなくても、こんなにうまいものを食っているのだから、弟はどんなにうまいものを食っているかわからん」
と、思うようになった。
 ある夜、兄はどうでも弟の食っているものが見とうなって、寝ている弟を殺してしもうた。そして、腹をさいてみたところ、弟の腹の中は、山芋の皮やつるばかりだった。兄は、
 「自分でまずいとこ食って、おれにうまいとこ食わせていたのか。こんな兄思いの弟を殺すなんて、おれはほんとに悪いことをしてしもうた」
と、後悔したが、もう取り返しはつかん。


 兄は、泣いて泣いて泣き通した。泣いているうちに、いつか、ホトトギスになってしまい、
 
 〽 弟恋しい 弟恋しい
 
と、山の中を飛び回るようになったと。
 今でもホトトギスは、山芋のとれる五月になると、
 
 〽 弟恋しい 弟恋しい
 
と、毎日、八千八声鳴く。ホトトギスの口ばしが赤いのは、あんまり鳴きすぎて、口から血をはくからだとさ。それでモズは、ホトトギスをかわいそうに思って、虫をとっては木の枝にさしておいて、ホトトギスに食べさせているんだと。
 山に行ったときには、ホトトギスの鳴き声をよーく聞いてごらん。
 
 〽 弟恋しい 弟恋しい
 
と聞こえるから。

  どんぺからっこ ねっけど。

「ホトトギスの兄弟」のみんなの声

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悲しい

「ホトトギス」 うちのほうにも夏になるとホトトギスが鳴いています。三浦哲郎さんの「わくらば」の中に、お姑さんが嫁さんにこの昔話を語る場面があります。 少し残酷で、悲しいお話ですが、検索したら、こちらのサイトにあったので聴きました。 ( 50代 / 女性 )

悲しい

小さい頃、兄弟喧嘩をするといつも母がこの話をしていました。 私も母になり、子供達が食べ物のことで喧嘩をすると、話していました。実は話もうろ覚えでウグイスが啼く頃になると、この話を思い出して、ウグイスの話だったのか、ホトトギスの話だったのか、気になっていました。 母の話では山芋がサツマイモに変わっていました。元のお話が読めて良かったです。ありがとうございます。( 60代 / 女性 )

悲しい

「ホトトギスの兄弟」 と言う昔話を知ったのは、短歌の仲間が父から聞いて短歌にしたからです。インターネットで調べて、知りました。( 70代 / 女性 )

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