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かじやといしゃとみこ
『鍛冶屋と医者と巫女』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
話者 田沢 とめゑ
再話 清野 久雄
整理・加筆 六渡 邦昭

 むがしあったけど。
 鍛冶屋(かじや)と医者と巫女(みこ)が三人死んで、道づれになったけど。
 地獄さ行くど、こんどまず、医者から閻魔大王(えんまだいおう)の前へ呼ばれて、
 「きさまは娑婆(しゃば)にいるとき、病人さ薬だなどと言って、炭酸水などえっぺ飲ませで、金をとった奴ださげ、釜入れ申しづげる」
 て、そう、言い付けたけど。
 そうすっど、鬼、連れで側さ控(ひけ)えだでんだ。 
 それから、鍛冶屋が呼ばれで、
 「きさまは娑婆にいるとき、安物高く売って金をえっぺとったさげ、釜入れおおせづげる」
 て。


 それがら、こんど巫女呼ばれだけど。
 「きさまは娑婆にいるとき、嘘のお告げして、みんなから銭や米とったさげ、釜入れおおせづげる」
 て、そう言われて、三人、大っき釜さ入られで、どんどど沸(わ)かせで、火焚(ひた)えだでもの。
 すっと巫女どの、
 「火戻ししっさげ心配しんな」
と言って、火戻しすっど、でって熱ちゃぐならねでもの。
 三人な、温泉湯治(おんせんとうじ)みだいだって、ガボガボど喜んでいだけど。 
 そうすっど、鬼、閻魔さまさ、
 「閻魔さま、閻魔さま、今の奴べら、なんぼ火焚えでも熱がらね。温泉湯治でも行ったみたいでがんすから、どうしたらえんでしょ」
と言うど、
 「そういう馬鹿もんではしょうがねさげ、引き戻せ」
と言うので、引き戻すと、閻魔さまは、
 「三人を剣(つるぎ)の山さ登させれ」
と言い付けたでもの。こんど鍛冶屋どの、


 「ちょっと待で」
と言って、鉄の草鞋(わらじ)三足、ちょっとの間でこしらえてしまて、三人は、それをはいで登るど。
 鬼な、うしろがら、ドンドと追っかけるでもの、三人で登ったでんでがんし。
 「なんという景色だよし。娑婆にいたとき、こんな良(え)景色見だごどね」
と言いながら、ガランガランと走って行ったでもの。
 そうすっと鬼、また閻魔さまさ教えだでもの。
 「閻魔さま、閻魔さま、いまの奴べら、剣の山さ登せでも、景色良のなんのて、ガランガランど走って登ってしまいました。どうしたらえんでしょう」
 て。すっど、
 「そんだらば、赤鬼、青鬼に一人ずつ呉(く)れっさげ、呑んでしまえ」
と言い付けだでもの。
 そうしたでば、閻魔さまの前さ、三人来たんださげ、
 「お前だじ三人は赤鬼、青鬼の食(じき)にしてしまうさげ、そのように心得れ」
 て、そう言われましたど。


 そう言われっど、こんど医者どの、
 「ちょっと待で」
 て、薬調合(ちょうごう)しで、三人の頭さツルツルど塗(ぬ)ってしまったけど。
 そうして、鬼、一人ずつさ向がって、口つけようとしたら、歯がみんな欠けで無ぐなってしまたでもの。
 そうすっと鬼、また閻魔さまさ教えだでもの。
 「またおれの前さ連れて来い」
 て、閻魔さま言うので、連れて行くど、
 「このような馬鹿者は、地獄さ置がさねえさげ、娑婆さ帰してしまう」
 て言われで、三人とも地獄がら娑婆さ吹き飛ばされだけど。
 帰ってみだら、三人とも、いま葬式(そうしき)出るどごろで、みんな泣ぐやら喚(わめ)くやら、大騒ぎなどごろであったでもの。生き返ったんで、びっくりしだけど。
 それで、旅の連れどいいもの良ええど。良えもんだのお。

 とっぴんからりん。 

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