民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 頓知のきく人にまつわる昔話
  3. 座頭さまとボタ餅

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

ざとうさまとぼたもち
『座頭さまとボタ餅』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐藤 義則
整理・加筆 六渡 邦昭

 昔、あるどこさ、爺(じじ)と婆(ばば)、あったけド。
 あるどぎ、旅道中(たびどうちゅう)の座頭(ざとう)さま、
 「どうぞ、一晩泊めて呉(け)らっしぇ」
 って、訪ねてきたけド。爺婆ぁ、
 「良(え)げす、えげす」
 って泊めだげんとも、困ったごどにゃ、ほの晩餉(ばんげ)にボタ餅(もち)コこさえで食うべどって居だがども、なんせ爺婆の貧乏所帯(びんぼうしょたい)だもんで、爺婆の分ばりしか無(ね)がったはで、なじょすんべって思案(しあん)したけド。


 ほんで、婆ァ、こっそら、
 「爺や、まんず寝ででござえ。夜ン間、ボタ餅コ出来(でげ)だらば爺ば呼ばっさえて。なス」
 って、語りコしたけド。すっと、爺ァ、
 「婆や、声コ出して呼ばってァ、座頭さまさ感づがって大事(おおごと)ら。ほんで俺の足さ細引き綱(つな)コ結い付けで置ぐはげ、ボタ餅コ出来たらぐぐっと引っぱって、教えろや」
 って、語りコしたけド。すっと、婆ァ、
 「ハァ、これらだば座頭さまさ見ねぐて、良(え)え案配(あんばい)だな。」
 って、爺の足コさ細引き付けたけド。爺ァ、
 「座頭さま、座頭さま、早よ寝んべァ、なス」
 って、爺ど座頭さまど二人ァ、寝だけド。

 
 夜ん間えなってがら、婆ァ、こっそらボタ餅こしゃえで、くっくっと細引きの綱コ引っ張ったら、こりゃ何としたごどが、爺ァンでねぐて、座頭さま引っ張らって来たけドヤ。婆ァ、
 「あじゃ、なじょすんべ」
 どて、あたらふたらしてるど、座頭さま、

 〽  餅つぐど 目にはさやかに見えねども、
   足の綱にぞ驚(おどろ)かされぬ

 って、歌コ詠(よ)んで、一人でボタ餅コみんな食ってすまったけド。

 ドンペ カラッコ ナエケド。

「座頭さまとボタ餅」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

年越しの豆(としこしのまめ)

むかしむかしの大昔、あちこちの山やまに鬼(おに)がたくさん棲(す)んでおったと。その鬼どもが里に出て来ては、子供をとって喰ってしまうので、里の人たち…

この昔話を聴く

福の神(ふくのかみ)

 むかし、あるところに長者があったと。  来客がひきもきらず家業は盛んであったが、働くばかりで、ひと息つく暇もない。  ある日のこと、長者は八卦易者を訪ねて、  「わたしの家には朝から晩まで来客が多くて困っております。お客の来なくなる方法はないものでしょうか」 ときいた。

この昔話を聴く

無言くらべ(むごんくらべ)

むかし、あるところにお爺さんとお婆さんがおった。あるとき、隣から餅を七つもらった。夜も更けて、天井にぶら下げたランプの下で、餅を盛った皿を真ん中に、お爺さんとお婆さんが向かい合って座っていた。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!