怖い雪女郎を聞いてみて、本当に、怖い民話でしたよ。また、地方の民話話を聞かせて下さい。宜しくお願い致します。( 40代 / 女性 )
― 山形県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし、とんと昔。
山形県の小国郷(おぐにごう)の雪野っ原(ゆきのっぱら)に、東の家と西の家の二軒の家があったと。
吹雪(ふぶき)がヒュウヒュウ吹く夜のこと、どこからか白い衣(ころも)を着た女が一人やってきて、東の家の戸を叩(たた)いた。
ホトホト、ホトホト。
「いったい誰じゃ。こんな寒い晩に」
東の家の親父(おやじ)は根性悪(こんじょうわる)だったと。
たいぎそうに戸を開けると、
「何の用じゃ」
と聞いた。女は、
「旅の者でござります。吹雪で道に迷ってしまいました。難儀(なんぎ)しています。どうか一晩のお宿、かしてもらえませんでしょうか」
「見ず知らずの女にか」
「土間の隅(すみ)っこでも良いですから、どうかお願いいたします」
「俺(お)ら家(え)では、病人おるで泊めらんねえ。隣(となり)さ行って頼めや」
東の家の親父は嘘(うそ)こいて、寒そうにこごえている女の鼻先で、戸をピシャンと閉めた。
女は氷のような眼をスーッと細めて、閉められた戸をじいっと見つめた。それから西の家を訪ねた。
ホトホト、ホトホト。
「はやぁ、こんな吹雪の晩に出歩くお人がいるとは。爺(じい)、ちょっと出て下さいな」
婆(ばあ)に言われて、爺が戸を開けたら、戸口に白い衣で今にも凍(こご)えそうな女が一人立っておった。
「あれゃ、おどろいた。ささっ、そんなところにいないで、とりあえず家(うち)の内(なか)に入って。ほれ」
って、西の家の爺、女の手を引いて土間に入れ、箒(ほうき)で雪を払ってやったと。
「婆、見ての通りだ。温(ぬく)い茶を一杯たのむ」
「はえはえ」
って、婆が茶碗(ちゃわん)を差し出すと、女はためらいながら飲んだ。そして、
「こんな夜にすみません。私は旅の者でござります。吹雪で道に迷ってしまい困っていました。一晩お宿をお借りしたいと思い、戸を叩きました」
というた。爺は、
「そうか。こげなときはお互いさまだで、そうとわかれば、さぁさぁ、貧乏所帯(びんぼうじょたい)の爺と婆の二人だけの家だ。何も無いけども、ごゆるりとしてござっしぇ。なあ婆」
「はえ、はえ。どうぞ何ぼでも泊まってけ」
って、やさしく泊めてやったと。吹雪は一晩中吹き荒れた。女は爺と婆をやわらかな眼ぇで見、あらためてお礼を述(の)べて寝たと。
次の日の朝、吹雪が嘘(うそ)みたいにおさまって、おだやかな晴れの朝だったと。
西の爺と婆は、囲炉裏(いろり)の火をゴンゴン燃やして、女が起きてくるのを楽しみに待っていた。が、女はなかなか起きてこなかった。
「どうしたや、なんぼか疲れていたのだべか」
「ちょっくら、見てきようか」
って、婆、女が寝ている部屋のふすまを開けたら、女の寝息(ねいき)が聞こえないのだと。
「どうしたべ」
って、掛け布団をそおっとはいでみたら、寝床(ねどこ)には女の姿はなくて、その変わり、ビシャビシャに濡(ぬ)れた白い衣に包まった、黄金(こがね)の一塊(ひとかたまり)が転がっているばかりだったと。
女は雪女郎(ゆきじょろう)であったと。西の家の爺と婆の温かい心で、雪の体が解けてしまったと。
西の家は、その晩から福づいて、一生安楽に暮らしたと。逆に、東の家では性悪親父(しょうわるおやじ)が本当に病気になって、ひどい貧乏になったと。
雪がヒューヒュー吹雪く夜に、訪ねてきた旅のお人を泊めてやると、必ず福を授(さず)けて行くのだそうな。
どんぺすかんこねっけど。
怖い雪女郎を聞いてみて、本当に、怖い民話でしたよ。また、地方の民話話を聞かせて下さい。宜しくお願い致します。( 40代 / 女性 )
むかし、紀州(きしゅう)、今の和歌山県の有田(ありた)と日高(ひだか)の郡境(ぐんざかい)にある鹿ケ瀬峠(ししがせとうげ)というところへ、惣七(そうしち)という猟師(りょうし)が猪(いのしし)を撃(う)ちに行ったそうな。 いつものように犬を使って猪を追い出そうとしたが、その日にかぎって一頭も出てこん。
「雪女郎」のみんなの声
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