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にひゃくにんのどろぼう
『二百人の泥棒』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
整理 六渡 邦昭

 むかし、ある山の中に、二つの泥棒村があったと。
 上(かみ)の村には泥棒が百人、下(しも)の村にも泥棒が百人住んでおったと。
 あるとき、上の村の泥棒たちが、お城の宝物を、たーんと盗んで来た。
 それを聞いた下の村の泥棒たちは、
 「ようし、上の村の宝物を全部こっちの村で、もらってしまおう」
と、相談をしたと。
 そして、村境に大きな落とし穴を作ると、使いの者が、上の村へ行って、
 「おーい、上の村の泥棒よー、下の村にも宝物を半分、分けてくれー」
と、叫けんだと。 

 
 さあ、怒(おこ)ったのは上の村の泥棒たち。
 「なんだと、泥棒に宝をよこせとは何事だ」
というと、ワァーッとばかりに下の村へ押し寄せたと。
 そのとたん、村境の落とし穴にズドーンと落っこちて、みな死んでしもうたと。
 喜んだのは、下の村の泥棒たち。
 上の村へ行って宝物を盗ってくると、片っぱしから分けはじめた。
 ところが、いろんな宝物があるから、口々(くちぐち)に、
 「おれのは少ない」
 「おれのは見劣(みおと)りする品ばかりだ」
と、不平(ふへい)たらたらだと。

 そこで、みんなが二組(ふたくみ)に分れて、勝った方の組が宝物を全部もらうことにしたと。
 百人が五十人ずつに分かれて、エイヤッ、エイヤッと、戦いをはじめた。
 しばらくすると、弱い方の組は全部やられてしもうた。


 今度は、残った五十人が、また二組に分かれて、エイヤ、エイヤ、と戦ったと。
 そうやって、勝った組が半分ずつに分かれて戦い続けているうちに、とうとう、二人になってしもうたと。
 そこで二人は考えたと。
 「やれやれ、やっと二人になった。どうじゃい、二人で宝物を山分けにせんかい」
 「そうじゃな。二人で分けたほうがよかろう」
 「そうと決まったら、なんだか腹がすいた。わしはひとっ走(ぱし)り、ふもとの村へ行ってめしを盗んでくるから、それまで、宝物を分けるのを待っていてくれ」
 「ああ、わかった」
ということになって、一人の泥棒は、山をかけ下(お)りて行ったと。
 山に残った、もう一人の泥棒は、
 「それにしても、宝物を一人占(じ)めにする方法はないもんかのう」
と考えていたが、めしを盗みに行った泥棒が帰って来るのを待ち伏せして、いきなり跳(と)びついて、殺してしもうたと。


 最後に一人残った泥棒は、
 「これで、宝物は全部おれさまのもの。さてさてさて、腹が減ったわい。どうれ、こいつが盗んできた飯(めし)でも喰うか」
というと、地面に転がっていた握り飯を拾って、パクッと食らいついた。
 すると、
 「あ、いたたた、腹が痛い、のどが焼ける」
というて苦しみ出し、あっという間に死んでしもうたと。
 握り飯に毒が入っていたわけさ。
 みんな、みーんな、自業自得というものさ。

 とんぴんからり、さんしょの実。

「二百人の泥棒」のみんなの声

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まさかこんな結末だとは!( 40代 / 男性 )

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