民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 狐が登場する昔話
  3. 旅人と虎と狐

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

たびびとととらときつね
『旅人と虎と狐』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 武田 正

 むかしあったけど。
 ある夏の日盛(ひざか)りに、旅人(たびびと)が道をとぼとぼ歩いて行くと、檻(おり)に入った虎(とら)がいたっけど。
 知らんぷりして通り過ぎようとしたら、哀(あわ)れっぽい声で言うんだと。
 「どうかおれを、この檻から出しておくやいな」
 旅人は、
 「お前をこの檻から出したら、お前からおれが食われるんべな」
と言うと、虎は、
 「決して食ったりしねぇから」
と言うので、虎の言葉を信用して檻の錠をはずしてやったと。
 そうすっど腹のへってる虎は檻から出ると、食いたくてたまらねくなってしまったと。


 旅人は考えて、 
 「ほんじゃこうすべ。この道歩いて行きながら、出合った三人の人から話聞いて、三人とも同じ考えだば、おれぁお前に食われても仕方ないべ」
と言って歩き出したと。
 最初に会ったのは牛(べこ)だったと。牛に話して返事を待ってたら、牛は、
 「おれたちの乳をさんざんしぼって飲んだ上に、肉まで食う人間なんざぁ、虎に食われた方がええ」
と言うたと。虎は勢いづいて旅人に飛びかかるかっこうになったと。
 「虎さん、虎さん、まだ二人残ってるもの、忘れんねでおくやい」
と言うて、また少し歩いたら、汗(あせ)だくになって、道端の大っきな木(き)の下(した)で休(やす)んだと。そこで大木(たいぼく)に聞いたと。そしたら大木は、
 「おれの木陰(こかげ)に休んだ上に、伐(き)り倒(たお)して薪(たきぎ)にしてしまう人間なんざ、遠慮すっことないから、食ってしまえ」
と言うたと。旅人は、
 「まだ一人残ってんの、忘れねでおくやい」


と言うて、また歩いて行ったら、狐に出会ったと。事の次第を話して返事を聞くと、狐は考えていたっけぁ。
 「何のことだか、さっぱり分んね。そもそも事の始めから、おれに見せてけろ」
と言うから、旅人は虎と狐をつれて、またその道を引返したと。
 そうすっど虎はまた檻の中へ戻ってしまったと。そうして錠をされてしまったと。
 「このままいれば何もないんだべ。こんでよし……と。旅の方(かた)よ、先を急ぐべはぁ」
と狐が言うので、旅人はやっと安心して、道を歩いて行ったと。

 とうびん。

「旅人と虎と狐」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

怖い

わたしたちは動物や植物を敬って生きているのか。「畏れ」を忘れず、覚悟を持って自然と向き合わなければならない。( 40代 )

楽しい

自分が助かる為なら平気で嘘を言う。簡単に信用してはいかんとこう言う話や

驚き

狐、かしこい。人間の味方してくれたんだね。でも、牛や木にも人間はよく思われていないのね。( 40代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

泣き味噌三文、笑ったら五文(なきみそさんもん、わらったらごもん)

あんたさん、こういう唄、知っていなさるかい。「泣き味噌小味噌 笑ったら五文 泣き味噌三文 笑ったら五文 あっぷっぷ」泣く子へのあやし唄でね、今はあまり聞かなくなりましたが、私ら子供のころはあちこちでよく唄っていましたよ。

この昔話を聴く

カンザシをさした河童(かんざしをさしたかっぱ)

紀州(きしゅう)、今の和歌山県西牟婁郡中辺路町(にしむろぐんなかへじまち)に伝わる話をしようかの。ガイラボシというのを知っているかな。ガイラボシとい…

この昔話を聴く

雪女(ゆきおんな)

むかし、白馬岳の信濃側のふもとの村、今の長野県北安曇郡白馬村に茂作と箕吉という親子の猟師が暮らしてあったと。  ある冬のこと、茂作と箕吉は連れだって猟に出掛けた。  獲物を追って山の奥へと分け入るうちに空模様が変わったと。先ず寒さがきつくなり、あたりが急に暗くなって、冷たい風が山を揺らしてゴーと吹いてきた。

この昔話を聴く

現在881話掲載中!