お爺さんの言う通り、くたびれそうww( 10歳未満 / 女性 )
― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
とんと昔あったげな。
あるところにとても話し好きの爺さんがあったと。
毎晩(まいばん)毎晩若い衆(し)が幾人(いくにん)も来て、とてつもない話をしては、爺さんを喜ばしていたと。
挿絵:福本隆男
爺さんも若い衆もアハハ、アハハと笑うて大騒ぎしていたが、どの若い衆の話も、すぐに終わってしまう。爺さんが、
「若い衆よ、これより長い話は無いちゅう位の長い話はないものかのう。わしに『もう、ええ』言わす位の長いやつは」
というと、ひとりの若い衆が、
「そしたら俺が長い長い話をしようかいのう。けど、俺の話のなかで数を言うたら、数の分だけフウとあいづち打ってくれんかのう」
というた。
「ふむふむ、あいづちな、あいわかった」
「ほんとうにあいづち打ってくれるな。ひとつ言うたらフウ。2つ言うたらフウ、フウだ。ほんじゃ始めるぞ」
爺さんと若い衆の語りくらべ、聴きくらべが、こうしてはじまったと。
「あるところの船頭が千石船(せんごくぶね)に蛙(かえる)を一杯積んで港に着いたとよ。
「……」
「荷受けの商人(あきんど)が来て、蛙を受け取るんじゃが、数に間違いが無いか確かめたいと言うんじゃぁ」
「まあ、そりゃそうじゃろな」
「そこで船頭が水夫(かこ)に言いつけて、蛙の入ったモッコの口を開けさせたと。」
「あれま、そんなことをしたら、蛙は逃(に)げ出さんかえ」
「そうなんじゃ。爺さんの心配されるとおり、蛙が逃げよったんじゃ」
「ほれみい、知恵の無いことしよる」
「立ち合(お)うている商人の前を青蛙(あおがえる)がピョンと跳(と)んだ」
爺さん、思うたとおりの蛙の様子にニコニコしてる。話の続きを待つふうだ。が、若い衆、話を止めたままだ。爺さん、どうしたとばかりにマユ毛を引き上げたら、若い衆もマユ毛を引き上げ、アゴをしゃくって、何やら催促(さいそく)しているふうだ。
「おっ、おお、そうじゃった。あいづちじゃったな。よしよし。青蛙がピョンと跳んだから、こうだな。フウ」
軽くうなずいた若い衆、語りを続けた。
「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、青蛙が二匹ピョン、ピョンと跳んだ」
「フウ、フウ、こうじゃな」
若い衆は、また軽くうなずいて語りを続けた。
「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、三匹ピョン、ピョン、ピョンと跳んだ」
「フウ、フウ、フウ」
「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、四匹ピョン、ピョン、ピョン、ピョンと跳んだ」
「フウ、フウ、フウ、フウ」
「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、五匹ピョン、ピョン、ピョン、ピョン、ピョンと跳んだ」
「フウ、フウ、フウ、フウ、フウ」
爺さん、このあたりで、ようやく若い衆の魂胆(こんたん)に気がついた。
「若い衆よ、蛙はモッコに入ったままいっぺんに跳んでくれんもんかや」
というたら、若い衆は、
「爺さん、話は始まったばかりだぜ。千石船には一杯積んでいるのに、まだ一袋目だ。舳(みよし)の先っぽもまあだ空いとらん」
というた。
挿絵:福本隆男
爺さん、この先を想(おも)うただけでくたびれてしまった
「もうええ、もうええ」
というたと。
昔まっこうこう。
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