民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 伝説にまつわる昔話
  3. 元取山

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

もとどりやま
『元取山』

― 富山県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、ある山にほら穴があってな、麓(ふもと)の村の者は、このほら穴から、お客用のお膳(ぜん)やお椀(わん)を借りとったそうな。
 ほら穴の前で、ポンポンと手を打って、
 「ほら穴さま、ほら穴さま、お願えします。お膳五人前、お椀五人前、借してくんなせぇ」
と、願(ねが)えば、次の朝にはちゃあんと揃(そろ)えてほら穴の前に置いてある。用が済んだら、きれいに洗って返しておくきまりなんだと。
 ある時、欲張(よくば)り爺(じい)さがお膳とお椀を借りたそうな。用が済んでも返すのをいちにち延ばしにしとる。
 あんまりきれいで品物(しなもの)がいいものだから、
 
 「こら、返さんで、俺(おら)のものにしよう。こんげにいい物、分限者(ぶげんしゃ)でも持っていねえ」
と、とうとう返さないでいたんだと。


 そうしたら、今度、村の者がいっくら頼(たの)んでも、ほら穴から、お膳もお椀も出て来なくなってしまったと。
 「こら、誰かほら穴さまを怒(おこ)らせた者がいるな」
 村中大騒ぎになった。が、欲張り爺さは知らん顔。
 やがて、秋になって米が穫(と)れた。欲張り爺さは、馬に米俵(こめだわら)をつけて町へ売りに行った。
 すると、どうしたことか、馬は、町へは行かず、山へ行くんだと。
 「そっちでねぇや、町へ行け」
と、いっくら綱(つな)を引っ張っても、馬は山の方へ、山の方へと行くんだと。その内、馬は、ほら穴のところへ来て勝手に中に入って行ってしまった。


 欲張り爺さは、前の事があったもんだから、恐くって、ただ穴の前でおろおろするだけなんだと。
 すると、穴の奥から、
 「アハハハハ」「オホホホホ」
と、いくつも嘲笑(あざわら)う声がして、
 「お膳とお椀の替わりに、この米をもろうておく。これで元が取れた」
 こう言ったそうな。

 それからじゃ、このほら穴のある山を、元取山(もとどりやま)と言うようになったのは。 

 元取山とほら穴は、今でも、富山県の福岡町にあるそうな。

 これでパッチリ 柿の種。

「元取山」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

聟の夢(むこのゆめ)

 昔、あったけずぉな。  あるどごに、隣(となり)村がら聟(むこ)貰(もら)た家(え)あったけど。  その聟がある時(じき)の正月の元日の朝間、神様さお燈明(とうみょう)つけで拝(おが)んでいだけど。

この昔話を聴く

猪の相撲(いのししのすもう)

お前(ま)んさぁ、知っとられますかいのう。月夜の晩にゃぁ、猪(いのしし)が山ん中で相撲(すもう)ば取っちょるっちゅうのを。ん、知らんか、そうか、なら…

この昔話を聴く

宝の米俵(たからのこめだわら)

 むかし、農家では米俵(こめだわら)をあけて中の米をくみ出し、俵(たわら)の中の米が残り少のうなると、さかさまにして俵のまわりや底のところを棒(ぼう)で叩(たた)き、中の米を一粒(ひとつぶ)残さず出したそうな。

この昔話を聴く

現在881話掲載中!