― 徳島県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに爺さと婆さがおって正月神様がおかえりになる日に雨がドシャドシャ降ったと。
爺さと婆さがお茶をのみながら、
「この雨はやみそうにもないのう」
「ほんに、正月神さんもなんぎされてござらっしゃるじゃろ」
と話しておったら、間がええちゅうか、そこへ七人の正月神様がかけこんで来たそうな。
「爺さ、爺さ、笠(かさ)か蓑(みの)をかしてくれぬか」
というので、爺さと、婆さは家中(いえじゅう)をさがしたと。
蓑と笠を四つみつけて、四人の神様にお着せもうしたが、残り三人には着せるものがないのだと。
もいちどさがしたら、古いバンガサが二本見つかったと。二人の神様に差しあげたが、どうしても一人分たりない。
そこで、一枚だけ残しておいた爺さが仕事をするときに着る合羽(かっぱ)を差しあげたそうな。
七人の神様は、礼を言って雨の中をかえっていかれたと。
爺さと婆さは、
「まず今日は何よりも良いことをした」
と、こころほかほかして寝たそうな。
それからしばらく何の変わったこともなく、春夏秋冬ときて、また大晦日(おおみそか)をむかえたそうな。
大つごもりの晩に、爺さと婆さが「年越しの用意も出来ぬし困ったわい」と話していると、外で話し声が聞こえて、また七人の正月神様が入って来られたそうな。そして、
「爺さ、婆さ、せんだってはありがたかった。お礼にお前たちに福を授けに来た。何が欲しい」
という。爺さと婆さが、
「わしんちはこんな貧乏な家じゃけ、年を越せんでこまっちょった。年を越せるだけの金と米があればええ」
とありがたがると、七人の正月神様は打ち出の小槌(こづち)をくれたそうな。そして、
「この小槌を打てば、何でも好きなものを出せる」
といって出て行かれたと。
ところが、七人の神様のうち、一人の神様があとに残って、
「爺さ、婆さ、まだ欲しいものがあるのではないか」
ときくのだと。
その神様は、爺さの合羽を差し上げた神様だったそうな。
爺さと婆さは
「やや子が欲しい」
というたと。
「それでは、明日の正月の朝がきたら"おめでとうございます"と二人があいさつさえすれば若返るから、それからややこをつくるがよい」
と言うたそうな。そうして、その神様も出て行かれたと。
元旦の朝になって、言われたとおりあいさつすると、たちまち二人は十七、八の若者とあねさんになったと。
それから二人は、ややこも授かって、お米もお金も出して一生安楽に暮らしたそうな。
むかしまっこう。
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むかし、ある村に藤六(とうろく)という百姓(ひゃくしょう)がおったと。 ある日のこと、藤六が旅から村に帰って来る途(と)中、村はずれの地蔵(じぞう)堂のかげで、一匹の狐(きつね)が昼寝(ね)しているのを見つけた。
「正月神様」のみんなの声
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