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とうふとあぶらあげとおから
『豆腐と油揚げとおから』

― 静岡県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかしあったと。
 ある日、豆腐屋(とうふや)の主人(しゅじん)が用事で家を留守(るす)にしたと。
 そこで豆腐と油揚げ(あぶらあげ)とおからが、
 「親方(おやかた)がいないときくらい、のんびりすまいか」
 「ああそうだ、何かして遊ぼう」
 「それがいい」
というて、三人して座敷(ざしき)へあがって茶を飲んだと。
 そのうちに豆腐が、
 「ひとつ歌でも作って遊ぼう」
というたら、油揚げとおからが、さんせいしたと。豆腐が、
 「いいだしっぺのおれから、まず歌おう」
というて、

 
〽 火攻(ぜ)め水攻め
  一丁二丁(いっちょうにちょう)と
  切りさかれては
  もとのマメ(豆)にはなれやせん

 と詠(よ)んだ。
 
 次に油揚げが、

 〽 水攻め火攻めはいとわねど
  油攻めとはなさけなや
  末はおいなりさんといわれても

 と詠んだ。

 次におからが詠もうとしたら、そこへちょうど主人が帰って来た。
 三人はあわてて、元の場所に戻ろうとした。
 豆腐と油揚げは自分の桶(おけ)にすべり込めたが、おからだけは遅(おく)れた。あせればあせるほど、方々(ほうぼう)に広がってしまったと。


 そこへ主人が来て、
 「誰がおからを座敷に広げた。きたない」
というて、片端(かたはし)から箒(ほうき)で掃(は)いて庭に捨ててしまった。
 おからは口惜(くちお)しくてならない。そこで庭から大声で、こうどなった。
 「俺が主人は、加藤清正(かとうきよまさ)!」
 すると主人は、座敷から、
 「そりゃまたなぜに?」
ときいた。
 すると、おからは、
 「から(唐)を攻めるじゃないかいのー」
というたと。

  それでいちがさかえた。

「豆腐と油揚げとおから」のみんなの声

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