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ひばりとおてんとさん
『雲雀とお天道さん』

― 埼玉県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところに雲雀(ひばり)とお天道(てんと)さんとがあったと。
 二人は、バクチが大好きだったと。
 ある日、二人は誘い合ってバクチ場(ば)へ行った。お天道さんが負けて、雲雀から銭(ぜに)借(か)りたと。そのあと二人は、勝ったり負けたりしながら、夜(よ)っぴいて遊んでおったが、明方(あけがた)にはスッカラカンに負けた。
 バクチ場もオヒラキとなって、二人は背中(せなか)を丸(まる)めて帰ったと。朝の白(しら)みはじめた道(みち)を歩いていたら、急にあたりが真暗闇(まっくらやみ)になった。
 


 「もしや」
と、胸騒(むなさわ)ぎしたお天道さん、あわてて家に戻り着くと、もう、天界(てんかい)から遣(つか)いが来ていて、 「ただいま、お父上(ちちうえ)が亡くなられました」
と、いうた。
 お天道さんは父天道さんの役目(やくめ)を引(ひ)き継(つ)ぐことになった。しかも直(ただ)ちにだと。 

 天界の遣いと一緒(いっしょ)に天に昇(のぼ)って行くお天道さんに、雲雀が、
 「今日貸(か)した銭、返(かえ)してから行け」
というたら、お天道さんは、高(たか)い所(ところ)から、
 「春に返すう」
というた。


 春になった。
 が、お天道さん、銭返してくれん。雲雀はお天道さんが、まだ山(やま)の端(は)にいる朝のうちから催促(さいそく)に行った。空(そら)へ舞(ま)い上(あ)がりながら、
 「貸した銭、返せ。貸した銭、返せ」
と、あたりにいる者、みんなに聞こえるようにいうた。
 
 そしたらお天道さん、うるさがって、天頂(てんちょう)へ、天頂へと逃げ昇って行ったと。
 雲雀は、いくら昇っても追いつかないのがくやしくてならん。
 「返さないなら利(り)取るぞ。利取るぞ」
というて降(お)りてきたと。



 
 昔にこういうことがあったから、雲雀は今でも、空へ舞い上がるときには、
 「貸した銭、返せ」
というて舞い上がり、舞い降りてくるときには、
 「利取るぞ」
というて降りて来る。
 また、雲雀がいったん空へ舞い上がってから横に飛ぶときは、
 「ちょっと五粒二朱(いつつぶにしゅ)負(ま)けた。お母(かあ)ちゃんに貰(もら)ってまた負けた」
というて、啼(な)いているのだと。

 おしまい ちゃんちゃん。

「雲雀とお天道さん」のみんなの声

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