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あかまたむこいりとはまうりのゆらい
『アカマタ聟入りと浜下りの由来』

― 沖縄県 ―
語り 井上 瑤
再話 新城 真恵
整理・加筆 六渡 邦昭

 昔、あるところにね、機織り(はたおり)の上手な美しい娘がいたって。
 その娘のところにね、夜な夜な、赤い鉢巻(はちまき)をした美しい男が通(かよ)って来るんだって。
 そして二人で夜更け(よふけ)まで楽しそうに話したり笑ったりしてるんだって。
 それを見た隣(となり)のお婆(ばあ)さんがね、不思議に思って、その娘に、
 「あんたは誰と話しているの。あれはね、人間ではないよ。マジムン(化物)だよ。ためしに針にね苧(うー)籠(ウー・バーラー)の苧を通して、男の着物の裾(すそ)に刺しておきなさい」
 ってね、教えたんだって。

 
 娘はね、その隣のお婆さんに教えられた通り、針に苧籠の苧を通して、その美しい男の着物の裾に刺しておいたんだってさあ。
 そしてね、明け方近くなってね、帰って行く男の引きずっている苧の後をたどって行くとね、その男は洞穴(ほらあな)の中に入って行くんだって。
 

※苧(うー)・・・イラクサ科多年草、長さ1m~2m、別名「からむし」。麻の一種で、茎の皮の繊維をほぐして糸を作ります。
 また、本来「お」と読みますが、沖縄では「うー」と呼ばれることがあります。

 
 そこで、お婆さんがそっと洞穴の中をのぞいてみるとね、アカマター(蛇)が体に針を刺されて、苦しそうにのたうちまわっているんだって。そしてね、
 「自分は針を刺されたので、もうすぐ死ぬが、人間に子供をつくって来たから悔いはない」
 って、仲間のアカマターに話してるんだってさあ。すると仲間のアカマターがね、
 「人間は利口だから、三月三日に浜下り(はまうり)をして、浜の白砂を踏(ふ)めば、子供は全部おりてしまうよ」
と言ってるんだって。
 それを聞いたお婆さんは、さっそくその娘に教えたんだって。
 娘はお婆さんの言いつけ通り、浜に下りて白砂を踏んでたくさんの蛇(へび)の子をおろしたんだってよ。
 それ以来、女は三月三日には浜下りをするようになったんだってさ。
 そんな話よ。おしまい。

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