民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 賢い子供にまつわる昔話
  3. 小穂までぶらぶら

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

こぼまでぶらぶら
『小穂までぶらぶら』

― 岡山県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに身上(しんしょう)のいいお庄屋(しょうや)さんがあったんと。奉公人(ほうこうにん)を幾人(いくにん)も使うていたんと。
 毎年お正月が来ると、元日の朝お雑煮(ぞうに)をたべたら、きまって、主人と奥さんが口をそろえて、
 「お前たち、遊びぃ行けえ」
 「さ、早よ行きい」
 いうて、奉公人たちを家から追い出すのだと。

 
 奉公人の中で一番小(こ)んまい男の子が、
 「どうしてじゃ」
 思うて、
 「今度お正月が来たら、いっぺん調べてみちゃろう」
 思うて待っていたら、お正月がやって来た。
 元日の朝、お雑煮を食べ終えると、やっぱり主人と奥さんが、
 「遊びぃ行けえ」
 「早よ、行きい」
 いう。
 一番小んまい男の子は、遊びに行ったふりをして、隠(かく)れて、こそっと主人と奥さんのすることを見ていたと。

 そうしたら、奥の間の、お年様(としさま)いうて特別のお正月神様を祭ってある神棚の前で、主人が着物の前をはだけて、
 「大穂(おおぼ)ぶらぶら」
 いうて、おちんちんをぶらぶらっと振った。


 そうしたら今度は奥さんが着物の前をはだけて、おめんちょを出して、
 「貝の口ぃ閉めた、閉めた」
 いうのだと。
 二人して掛け合いで、
 「大穂ぶらぶら」
 「貝の口ぃ閉めた、閉めた」
 
 小んまい男の子はそれを見て、自分もやってみたくなった。そして同じように着物の前をはだけて、小さいやつを出して、
 「小穂(こぼ)までぶらぶら」
 いうたんと。
 それを聞いた主人と奥さんは、怒るかと思うたら反対に喜んで、
 「どえらいめでたいことを言うてくれた」
 いうて、あれ食え、これ食えいうて御馳走(ごちそう)ぜめにしてくれたと。


 今、こんなことをする家はめったにないが、昔はあったらしいよ。
 今年一年の五穀(ごこく)がたくさん実るようにいうて、神様に願う、大事な行事だったん。

 むかしこっぽりきねのおれ。

「小穂までぶらぶら」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

狼石(おおかみいし)

 南部と秋田の国境(くにざかい)に、たった二十軒(けん)ばかりの淋(さび)しい村がある。この村から秋田の方へ超(こ)えて行く峠(とうげ)の上に、狼(おおかみ)の形をした石が六個(こ)並(なら)んでいる。

この昔話を聴く

茗荷もの忘れ(みょうがものわすれ)

むかし、あるところに一軒の宿屋があった。この宿の主人はとても欲が深く、部屋に忘れもんがあると、みんな自分のものにしてしまうような人だったと。あるとき…

この昔話を聴く

のぶすま

むかし、むかし。 ふたりの男が連れだって、茶臼(ちゃうす)山へ登ったそうな。 古い合戦(かっせん)のありさまを話し合いながら、あのあたり、このあたりと眺(なが)めていたが、せっかくここまで来たのだから、大茶臼(おおちゃうす)へも登ろうということになったと。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!