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こぼまでぶらぶら
『小穂までぶらぶら』

― 岡山県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに身上(しんしょう)のいいお庄屋(しょうや)さんがあったんと。奉公人(ほうこうにん)を幾人(いくにん)も使うていたんと。
 毎年お正月が来ると、元日の朝お雑煮(ぞうに)をたべたら、きまって、主人と奥さんが口をそろえて、
 「お前たち、遊びぃ行けえ」
 「さ、早よ行きい」
 いうて、奉公人たちを家から追い出すのだと。

 
 奉公人の中で一番小(こ)んまい男の子が、
 「どうしてじゃ」
 思うて、
 「今度お正月が来たら、いっぺん調べてみちゃろう」
 思うて待っていたら、お正月がやって来た。
 元日の朝、お雑煮を食べ終えると、やっぱり主人と奥さんが、
 「遊びぃ行けえ」
 「早よ、行きい」
 いう。
 一番小んまい男の子は、遊びに行ったふりをして、隠(かく)れて、こそっと主人と奥さんのすることを見ていたと。

 そうしたら、奥の間の、お年様(としさま)いうて特別のお正月神様を祭ってある神棚の前で、主人が着物の前をはだけて、
 「大穂(おおぼ)ぶらぶら」
 いうて、おちんちんをぶらぶらっと振った。


 そうしたら今度は奥さんが着物の前をはだけて、おめんちょを出して、
 「貝の口ぃ閉めた、閉めた」
 いうのだと。
 二人して掛け合いで、
 「大穂ぶらぶら」
 「貝の口ぃ閉めた、閉めた」
 
 小んまい男の子はそれを見て、自分もやってみたくなった。そして同じように着物の前をはだけて、小さいやつを出して、
 「小穂(こぼ)までぶらぶら」
 いうたんと。
 それを聞いた主人と奥さんは、怒るかと思うたら反対に喜んで、
 「どえらいめでたいことを言うてくれた」
 いうて、あれ食え、これ食えいうて御馳走(ごちそう)ぜめにしてくれたと。


 今、こんなことをする家はめったにないが、昔はあったらしいよ。
 今年一年の五穀(ごこく)がたくさん実るようにいうて、神様に願う、大事な行事だったん。

 むかしこっぽりきねのおれ。

「小穂までぶらぶら」のみんなの声

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