― 岡山県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、備中(びっちゅう)の国、今の岡山県の殿様が、立派なお宮を造ろうと思うて、国中の大工を集めたことがあった。
たくさんの大工が集まって来たが、国一番のお宮を造れるような、腕のいい大工はおらんかった。
ある日のこと、一人の大工がお城にやって来た。殿様は、今までは、大勢弟子(でし)を連れて来る大工ばかりだったのに、たった一人で来るとは、不思議(ふしぎ)なやつだと思い、
「お前、本当に一人でお宮を造れるのか」
と、問いただした。大工が、
「必ず、立派なお宮を造ってごらんにいれます。そのかわり、お宮が出来るまでは、仕事場を絶対に見ないで下さい」
というたので、殿様は、
「面白い、一人でどこまでやれるか、やってみろ」
と命令をした。
その日から、大工は、カキーン、カキーンと仕事をしはじめた。大工の仕事は一日経つと思わぬほど出来上がっている。
<一人でやっているのに、それはどうしたことだ>
と、殿様は不思議に思うた。
ある晩のこと、殿様はこっそり、大工の仕事場をのぞきに行った。すると、どうだ。一人のはずの大工が、何十人もいて、カキーン、カキーンと仕事をしている。それも、みんな同じ顔、同じ姿の大工だ。
「こ、これは、いったい、どういうわけだ。どれが本物の大工だか、見当もつかん」
殿様は、一人の大工を呼ぶと、
「大工の頭(かしら)は、どいつだ」
と聞いてみた。すると、その大工は、
「眼(め)の所に、ほくろがあるのが、わたしたちの頭だ」
と、教えてくれた。
お宮は、一日、一日、出来上がっていった。
そうして、やがて、立派な、国一番のお宮が出来た。
殿様は喜んで、喜んで、大工を呼び、
「見事な出来ばえじゃ。ほうびを与えよう」
というて、持てるだけの金銀を与えた。そのとき殿様がよおうく見ると、大工の目の所には、ほくろがあった。
大工が帰ろうとすると、
「一寸(ちょっと)待て、ところで、仲間の大工たちはどうした」
と、殿様は聞いた。大工は、何も答えず、そのまま、立ち去ってしもうた。
誰もいなくなった仕事場には、大工の姿形をした木の人形が、たくさん転がっていたそうな。
木の人形に魂を吹き込み、何十人という大工をこしらえて、お宮を造ったというわけさ。
そんなことが出来るのは、日本広しといえども、たった一人しかおらん。そう、飛騨の工匠(たくみ)という大工さ。
むかしこっぷり杵のおれ。
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むかし、あるところに一人の男があった。町へ行ってみると苗木(なえぎ)売りの爺(じ)さまがいたから、桃の木の苗木を一木買ってきて、裏(うら)の畑の端(はた)に植えたと。肥料(ひりょう)をやって、水もやり、早くおがれ、というてその夜は寝た。
長崎では、七月の最後の日曜日、決まって港や深堀(ふかぼり)、三重(みえ)などの村々から、ペーロンのドラの音がひびいてきます。一隻(いっせき)の和船に、三、四十名の若者が、手に手にカイを持って乗り込み、勇(いさ)ましいドラの音にあわせて漕(こ)ぐのです。
「飛騨の工匠」のみんなの声
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