民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 吉四六さんが登場する昔話
  3. ババラブーとオッキャラキャー

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

ばばらぶーとおっきゃらきゃー
『ババラブーとオッキャラキャー』

― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、豊後(ぶんご)の国、今の大分県(おおいたけん)大野郡野津市(おおのぐんのづいち)に、吉四六(きっちょむ)さんという面白(おもしろ)い男がおった。
 頓智働(とんちばたら)きでは、誰一人かなう者がないほどだったと。
 ある日、吉四六さんが浜辺を通りかかると、大勢の人達が集まって騒(さわ)いでおったと。
 「わしゃぁ長いこと漁師(りょうし)をやっちょるが、こげな魚は見たこともねえ」
 「そうじゃのう。昔にもこげな魚があがったち話は聞いたこともねえなあ」
 何でも、見慣れない魚が網にかかったそうな。
 「こりゃ面白そうだ。ちと、からこうちゃろ」
 持ち前のいたずら心をおこした吉四六さん、漁師達をかき分けた。

※大野郡野津町野津市:現在は、臼杵市野津町大字野津市

 
 「珍しい魚ちゅんで覗(のぞ)いて見たら、何の事はねぇ。こりゃぁ、ババラブーじゃねぇか。おめえたち漁師じゃろうが、こん魚の名も知らんたぁ、あきれたもんじゃ」
 漁師達は目をまんまるにして名前を訊(き)いた。
 「わしゃ、吉四六じゃ」
 吉四六さん、胸の内で舌をペロッと出してその場を離れたと。


 さて、それから一ヶ月も経(た)った頃、吉四六さんは突然殿様(とのさま)から呼び出しを受けた。
 「はて、何じゃろ」
 恐る恐る出向くと、殿様は、すっかり干(ひ)からびて干物(ひもの)になった例の魚を家来に持って来させた。
 「これ、吉四六。その方(ほう)この魚の名前を知っておるとのことじゃが、一体何と申す魚か」
 さぁ困った。何せ一ヶ月も前のこととて、あの場で何と言ったかまるっきり覚えていない。


 「は、は、はあっ、申し上げます。ええ、その魚は、オッキャラキャーと申しまする」
 吉四六さん、事もあろうに、殿様の前でまたまた口から出まかせを言った。
 「この痴(し)れ者め!その方、さきごろ、この魚をババラブーと申したと言うではないか。余(よ)を愚弄(ぐろう)するとは何事ぞ。その分には捨ておかぬ、そこへなおれ」
 殿様、刀をとってにらみつけた。が、そこは頓智の吉四六さん。少しもあわてず、
 「これはしたり。おそれながら申し上げます。生のイカも干せばスルメと申します。生のババラブーが干物になってオッキャラキャーと申しましても、何の不思議がありましょうか」と言って胸をぐいっと張ったそうな。
 さすがの殿様も、これには「ぐっ」とつまって、二の句がつげなかったと。

  もしもし米ん団子、早う食わな冷ゆるど。

「ババラブーとオッキャラキャー」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

吉四六さんのお話の中で一番好きです。殿様のまえでよくあんなとんちが思いつくなとびっくりしました。( 10歳未満 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

犬の眼(いぬのめ)

昔、あるところに一人の男があった。男は眼(め)の病気になったと。痒(かゆ)くなり、痛(いた)くなり、かすんできて、だんだん見えなくなった。

この昔話を聴く

坊さまの宿乞い(ぼうさまのやどごい)

むかし、あるところに薪(たきぎ)が少なくて大層(たいそう)難儀(なんぎ)している村があったと。ある冬の夕暮れどき、その村へ一人のみすぼらしい坊さまが…

この昔話を聴く

小座頭大座頭(こざとうおおざとう)

 昔、あるところに貧乏な爺(じい)と婆(ばあ)がいたと。  歳(とし)とりの晩(ばん)に、小さな座頭(ざとう)どんが戸を叩(たた)き、  「今晩(こんばん)だけ泊めてくろ」 というた。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!