井上 瑤さんが大分のローカルヒーローの吉四六さんの語りをしていたなんて驚きです。他にお話があるようなので聞くのが楽しみです。フジパンさんありがとう。( 40代 / 男性 )
― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、豊後(ぶんご)の国、今の大分県臼杵市(うすきし)野津町(のつまち)大字(おおあざ)野津市(のついち)というところに、吉四六(きっちょむ)さんというトンチの上手な面白(おもしろ)い男がおったと。
あるとき、吉四六さんが馬を洗おうと小川へ行ったら、隣(となり)のかみさんが洗濯(せんたく)をしていた。
「ちいと、からこうちゃろ」
いたずらのいい思案(しあん)が浮かんだ吉四六さん、財布から一文銭(いちもんせん)をひとつかみ取り出すと何くわぬ顔で馬の尻の穴をさすった。
馬は糞(くそ)をボタボタッと落とした。
それをザルで受けて、川でゆすり洗いをした。
隣のかみさんが洗濯の手を休め、
「妙(みょう)なことをする吉四六さんだ」
と見ていたら、何と、馬の糞が洗い流されたあとのザルの中に、銭(ぜに)がジャラジャラ現れたので、びっくり仰天(ぎょうてん)
「き、吉四六さん、そりゃ何な?」
「今、おまんが見たとおりじゃ」
「えらいことじゃ、えらいことじゃ」
隣のかみさん、洗濯物ほっぽらかして駆けていき、村中に触れまわった。
次の日、小川には、村人があっちからも、こっちからも見物にやって来た。
吉四六さん、例の手をつかって、ザルの中で銭をジャラジャラやってみせた。
みんなが感心していると、そこへ庄屋(しょうや)さんがやって来た。
「これ吉四六や、お前この間、その馬をわしに買うてくれと言うちょったな。五両で買うちゃろ」
「とんでもねえ、庄屋さん。庄屋さんに断られた日から、こん馬が銭糞(ぜにぐそ)をたれるようになりやして。今じゃ、こうして、毎日銭を拾うとりやす」
「十両出そう」
「うんにゃ。こん馬は限りもなく銭糞をたれ続ける馬ぞな」
「そんなら二十両出そう」
「なかなか」
「ご、五十両出す」
「あとで文句を言って、銭を返せと言わんでしょうな」
「言わん。絶対言わん」
「しょうがない。日頃お世話になっちょる庄屋さんのことだ。売りやしょう」
さてそれから十日も経ったある日、庄屋さんが真っ赤に怒って吉四六さんの家へやって来た。
「こん吉四六の、大カタリめ。あの馬は、うちに曳(ひ)いて帰ったら、たった一文も銭糞をひらんぞ」
「へえ?そげなはずはねえがのう。庄屋さんは馬に何を食わせやしたかの」
「何をって……馬はカイバと、大方(おおかた)決まっちょる。わしんとこじゃ、麦だの豆だの……」
「銭は食わせましたかの」
「馬に銭を食わす者があるか。たいがいにせい」
「そりゃいかん。なんぼ馬でも、食わんものはひられん。今夜、ひとつ銭を食わしてみてはどうかいのう。明日の朝には、必ず食わしたほどの銭糞をたれますじゃろ」
庄屋さん、口をあんぐりあけて、ものも言わんかったと。
もしもし米ん団子、早よう食わな冷ゆるど。
井上 瑤さんが大分のローカルヒーローの吉四六さんの語りをしていたなんて驚きです。他にお話があるようなので聞くのが楽しみです。フジパンさんありがとう。( 40代 / 男性 )
元々は手品のトリックのようなパフォーマンスだったのを、庄屋さんには「吉四六さんは銭を食わせてたから糞になって出てきたんだ」と勘違いさせることで自分のイカサマパフォーマンスを煙にまくという起点が聞きすぎた返しw( 20代 / 男性 )
きょちょむさんは、いたずらして、面白かったです。( 10歳未満 / 女性 )
九州の南、奄美群島(あまみぐんとう)のひとつ、徳之島(とくのしま)の母間(ぼま)あたりの集落には、昔は夜になると、“イッシャ”という小(こ)んまい妖怪者(ようかいもん)が、犬田布岳(いぬたぶだけ)から下りて来たそうな。
むかし、ある村にすぐれた娘(むすめ)をもった長者があった。 娘は器量もよいが、機織(はたおり)の手が速く、朝六(む)つから暮(くれ)の六つまでに一疋(いっぴき)の布(ぬの)を織(お)り上げてしまうほどだったと。
「吉四六さんと銭糞馬」のみんなの声
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