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『壺算用』

― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、吉四六(きっちょむ)さんが梅干(うめぼし)を入れる壷(つぼ)と水瓶(みずがめ)を買おうと、瀬戸物屋(せとものや)へ行ったそうな。
 「ごめんなっし、壷をひとつおくれなぁ」
 「へい、店先に並べてござんすから、見ちくだんし」
 店先の壷を見ると、みんな底を上にして伏せて並べてある。
 「こりゃあどうじゃ、どいつもこいつも、口のねえ壷ばかりじゃねえか。これじゃあ梅干を入れようたって、入れられねえや」

 ひとつ手にとって、ひょいとひっくり返して、ますますおどろいた。
 「ありゃまあ、人をばかにするにもほどがある。この壷は口がねえばかりか、こら、底が抜けちょる」
 壷はあきらめて水瓶を見ると、小さいのと大きい水瓶とがあった。値段を聞いたら十文(じゅうもん)と二十文(にじゅうもん)だと言う。
 吉四六さんは小さい十文のを買って帰ったと。

 
 そしたら女房(にょうぼう)に、
 「こげなこんまい水瓶じゃあ用を為(な)さん。要(い)らんき、まっと大っきいのを買(こ)うち来な」
といわれた。
 また、てくてく歩いて店に行った吉四六さん、店の小僧さんに小さい水瓶を渡して、
 「前に十文あげたなあ」
 「へい」
 「今また十文の水瓶をあげたきい、この二十文の大っきい水瓶をもろうちょくなあ」
 「へえ? ……へえ……??」
 こう言うと吉四六さん、大っきい水瓶をかついで、とっとこ、とっとこ帰って行ったと。
 その後ろ姿を見送りながら、店の小僧さん、しきりに首を傾(かし)げておったと。
 「へえ… まいど… ありい…」

 もしもし米ん団子、早う食わな冷(ひ)ゆるど。 

「壺算用」のみんなの声

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驚き

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