最後のどこがトンチなの?どっちかって言うと、3回目のとり方はアホなんじゃないかな
― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
吉四六(きっちょむ)さんが、あるとき、大きな瓢箪(ひょうたん)のくびれたところに長い縄(なわ)をくくりつけ、鴨(かも)のおりる池にやって来た。
縄の端(はし)に石を結(ゆわ)えつけて池のまん中に投げ込むと、石(いし)は沈(しず)み、瓢箪だけがぽかりと浮んだ。
吉四六さんは池に入り、縄につかまって鼻だけ水の上に出していたと。
しばらくすると、鴨が池に舞(ま)いおりた。泳(およ)ぎ回(まわ)っていた鴨の一羽が、ひょいと瓢箪の上へ飛び上(あが)って、ブルブルッと体(からだ)をふるわせた。
瓢箪の下にひそむ吉四六さん、手をニュッと出して鴨を掴(つか)まえ、下に垂らした縄(なわ)にくくりつけた。
他(ほか)の鴨はちいっとも気がつかない。
また一羽が近寄ってきて、瓢箪に止まった。
吉四六さんは、また、手を出してその鴨を掴み、下に垂らした縄にくくりつけた。
他の鴨はちいっとも気がつかない。
また一羽が近寄ってきて、瓢箪に止まった。
こうして吉四六さん、十五、六羽も鴨を捕(と)って、重いのもなんのその、ひっかついで、いきようよう帰ったと。
また別の日、吉四六さんは、長い糸の先の釣針(つりばり)にタニシをつけて池にやってきた。で、そのタニシをつけた釣糸(つりいと)を池のほとりに置いて、物陰(ものかげ)に隠(かく)れて見ていたと。
しばらくすると、鴨が五、六羽舞い降(お)りた。
そのうちの一羽がタニシを見つけて呑み込んだと。が、こなれが悪くて、元(もと)のままのタニシの糞(ふん)をたれた。
次の鴨がそのタニシを見つけて丸呑(まるの)みにしたと。その鴨もこなれないままのタニシの糞をたれた。
また次の鴨がそのタニシを見つけて丸呑みにし、タニシのままの糞をたれたと。
こんなふうに次々とタニシを丸呑みにしては糞をたれるので、一本の糸が鴨の口(くち)から尻(しり)へ、尻から口へと、ひとつづきにつながったと。
吉四六さん、頃合(ころあい)よしと、糸の端(はし)を引っ張ったら、造作(ぞうさ)もなく全部の鴨を捕(と)ることが出来たと。
重(おも)いのもなんのその、ひっかついで、いきようよう帰(かえ)ったと。
またまた別(べつ)の日(ひ)、吉四六さんは、他人(ひと)から借(か)りた鉄砲(てっぽう)をかついで池(いけ)にやってきた。
池には鴨がいっぱい浮んでいる。
吉四六さん、撃とうと鉄砲をかまえた。
鴨は気がついていない。
さあ、どうしようか、このあと、
はなそうか、はなさないか、
ええっ?
はなせってか、なら、
パーン。
鴨は、
飛んで逃げたげな。
もしもし米(こめ)ん団子(だんご)、早(は)う食(く)わな冷(ひ)ゆるど。
最後のどこがトンチなの?どっちかって言うと、3回目のとり方はアホなんじゃないかな
むかしむかし、ある竹藪(たけやぶ)の中に、大きな虎が一匹住んでおったと。虎は日ごろから、ひととび千里(せんり)じゃ、と走ることの早いのを自慢(じまん)にして、いばっておったと。
むかし、土佐藩(はん)のお抱(かか)え鉄砲鍛冶(てっぽうかじ)に五平という人がおったそうな。 五平の鉄砲は丈夫(じょうぶ)な作りと重量感で、今でもよう知られちょる。 ところで北川村の島という所に、その五平の作った鉄砲を持った猟師(りょうし)が住んじょった。
「吉四六さんの鴨捕り」のみんなの声
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