― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに貧乏(びんぼう)なお爺(じい)さんがおったと。
「正月二日の晩に、宝船(たからぶね)の絵を枕(まくら)の下にして寝(ね)れば良い夢を見る」
と聞いたので、爺さんはその通りにして寝た。
朝になると爺さんは、
「おら、天から福を授(さず)かる夢を見たや。天福(てんぷく)の夢だ。いい夢じゃった」
と言って喜(よろこ)んで起きてきた。
ほして春になって、爺さんは山の畑へ行って畑打ちをしていたら、鍬(くわ)に何か、カンカンと当たるもんがあった。
「はて、こら何だやら」
と思うて掘(ほ)ってみたところが、金瓶(かながめ)が出てきた。
「こら、金瓶でねか、金がいっぺ詰(つ)まっている。だどもこれは地から授かった地福だ。おらの授かったのは天福だすけ、これは家へ持って帰れねえ」
こう言って、そのままそこへ埋めて帰ったと。
ほうしてその夜、隣の爺さんがもらい湯しに来たんだんが、畑の金瓶のことを話して聞かせたと。
隣の爺さんは、それを聞くとじっとしていられねえで、こっそり、堀に行ったと。
ほうしたら、金瓶どころか、蜂(はち)の巣(す)のでっこいのが出て来て、蜂がブンブン飛んで、顔やら、手足やら、あちこちを刺(さ)されたと。
隣の爺さんは腹がたってならん。
「あの爺々(じじい)は何を言うているやら。金瓶だなんて言うてっからに、こら蜂の巣だ」
と、ぷりぷり怒って、ボロ布を見つけてきて蜂の巣にかぶせると、にっくい貧乏爺さんの家の高窓から、グーンと投げこんだ。
ほうしると、蜂の巣は金瓶になり、金瓶は割(わ)れて、ザン、ガラリンと大きな音がしたと思ったら、中からいっぱい大判小判が降ってきた。
家じゅうに金が散らかったと。
「そおら、天から金瓶が降ってきた。これこそおれに授かった天福だ」
ちゅうて、爺さんは大喜びでその金をもろうたと。
いちご さぁけぇた。どっぴん。
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むかしとんとんあったずま。ある村さ、とても働き者の若い衆(し)いだけど。その若い衆、何とかして物持ちになって、長者(ちょうじゃ)さまになってみだいと、常々思っていだけど。
「天福地福」のみんなの声
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