民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 化け物退治の昔話
  3. 山梨の怪

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

やまなしのかい
『山梨の怪』

― 新潟県新発田市 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、父さと嬶(かか)さと子がおった、嬶さの腹には、また子が出来ていたと。
 子を孕(はら)むと、口(くち)が変るって、嬶さ急に山梨(やまなし)が食いとうなってな、おっきな腹かかえ、もぎ袋、背に、うんこら、うんこら山へ行ったと。
 いく山越えたかて頃、やっと大きな山梨の木があって、その下に山梨がたぁくさん落ちていた。
 嬶さは「よがった、よがった」って、拾(ひろ)ったと。もぎ袋いっぱい拾ったと。
 さぁて家行かねばと思ったらもうあたりは暗くなって来た。
 しかたない、嬶さ山梨袋、木にしばって、朝まで待つ事にしたと。


 するとな、遠くから、葬式(そうしき)の行列(ぎょうれつ)が

 ドンガンジャーン ドンガンジャーン

 「山梨の木どこだぁ、山梨の木どこだぁ」って、嬶さ「夜、夜中に葬式出すは、化け物だぁ」って、山梨袋忘れて、急(いそ)いで山梨の木に登ったと。だんだん近づいて来たと、見ても、見ても、音だけで、何も見えんて。 

 「ここだぁ、ここだぁ」って、木の下、鍬(くわ)で、土掘って、死人埋(う)めたと。
 嬶さ「おっかねェおっかねェ」って木のてっぺんへごそごそ登って行ったと、その音聞きつけたか、
 「やれ、何者だ、取って食うぞう」って、
 冷たぁ~い手がヌルヌルって伸びて、嬶さの足つかんだと、ド―ンって嬶さ落されて、食われてしまったと。
 家じゃ、いくら待っても嬶さ帰ってこねし村中で探(さが)したが見つからん。とうとう、あきらめたと。こりゃ化け物のしわざじゃ云(い)うてな。


 何年かして、子が「父さ、俺、嬶の仇(かたき)取りに行く」って鉄砲(てっぽう)かついで、山梨の木の下へ出掛けたと。
 「ここが俺が嬶さが死んだとこか」って、待っていたって。暗くなって来た。そうしたら

 ドンガンジャーン ドンガンジャーン

 
 「山梨の木どこだぁ、山梨の木どこだぁ」
 って、葬式の列がだんだん近づいて来たって。
 「それきた」って鉄砲、(ガ―ン)
 ってうったと。
 「ケラケラケラ―」当らんかったて、気味悪く笑うと、青い火、ボッボッて燃やして、近づいて来るんだと。
 「何者だ、取って食うぞう」
 今度は、青い火めがけて、(ガン) って、うった。

 すると
 「ギャ―」って倒れたと。
 朝になると大むじなが一匹死んでいたと。
 家へ帰って、村中御馳走(ごっつおう)して飲み食いしたと。

 いずこ、むがしが、とっつぁげだ。

「山梨の怪」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

モグラの嫁入り(もぐらのよめいり)

あったそうな。あるところに、モグラが一匹いたんだと。そいで、それが子供産んだら、とってもいい子が産まれたんだって。「こんないい子を、モグラんとこなん…

この昔話を聴く

燕の土産(つばめのみやげ)

むかし、美濃(みの)の国(くに)、今の岐阜県(ぎふけん)大野郡(おおのぐん)宮村(みやむら)の段(だん)というところに、猪野谷(いのや)という人がいたと。

この昔話を聴く

宝の下駄(たからのげた)

むかし、あるところに大層親孝行なひとりの息子がおった。あるとき、母親が病気で寝ているので薬を買うお金が必要になった。そこで権造(ごんぞう)という伯父…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!