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うばっかわ
『姥っ皮』

― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに、大層気だての良い娘がおったそうな。
 娘の家は大変な分限者(ぶげんしゃ)での、娘は器量(きりょう)も良かったし、まるでお姫様のようにしておった。
 じゃが、夢のような幸せも永(なが)くは続かないもんでのぉ、可哀(かわい)そうに、母が、ふとした病(やまい)で死んでしもうた。
 しばらくたって継母(ままはは)が来だがの、この継母には、みにくい娘がいたんじゃ。
 なもんで、継母は、器量の良い娘が憎(にく)くてたまらんようになった。
 事(こと)あるごとにいじめてばかり。
 父も、これを知っていたが、継母には何も言えんかった。 

 それで、可哀そうだが、この家においたんではこれからどうなるかも知れんと思ってな、お金を持たせて、家を出すことにしたんじゃ。


 乳母(うば)もな、
 「あなたは器量もいいから、よっぽど用心(ようじん)しなければ危ないことに出逢(であ)うかも知れんから」
と、言って、姥(うば)っ皮(かわ)という物をくれた。 
 娘は、それを被(かぶ)って、年をとった婆様(ばあさま)の姿になって家を出た。
 こうして、娘はあちらこちらと歩いているうちに、ある商人の家の水くみ女に雇(やと)われることになったそうな。
 娘はいつも姥っ皮を被って働いた。
 風呂(ふろ)に入る時も、家中の者が入ったあとで入ることにしていたので、それを脱(ぬ)いでも誰にも見つけられんかった。


 ある晩のこと。
 娘がいつものように姥っ皮を脱いで風呂に入っていると、ふと若旦那(わかだんな)が見つけてしまった。
 さあ、それ以来若旦那は、一目(ひとめ)見た美しい娘のことが忘れられん。とうとう病気になってしまった。医者でも治(なお)らんのだと。大旦那が心配して占師(うらないし)に占ってもらった。 
 すると占師は、
 「家の内に気に入った娘があるすけ、その娘を嫁にしたら、この病気はすぐに治ってしまうがな」
と、言う。

 
 大旦那はびっくりして家中(いえじゅう)の女という女を全部、若旦那の部屋へ行かせてみた。が、気に入った者はなかったんじゃと。
 最後に、大旦那はまさかと思いながら、水汲(く)み婆さんを若旦那の部屋へ連れて行った。
 すると、若旦那はすぐに見破(みやぶ)っての、姥っ皮をとってしまったんじゃ。
 中から、それは美しい娘が現(あら)われたもんで、家じゅう大嬉(おおよろこ)びでの、 娘は、その家の嫁になって、いつまでも幸せに暮らしたそうな。

 こんでちょっきり ひとむかし。

「姥っ皮」のみんなの声

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