民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 面白い人・面白い村にまつわる昔話
  3. 二人の無精者

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

ふたりのぶしょうもの
『二人の無精者』

― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところに無精者(ぶしょうもの)の男があったと。
 あるとき、男は用たしに町へ出かけたと。
 家を出しなに、女房(にょうぼう)は握(にぎ)り飯(めし)をこしらえて、無精な亭主(ていしゅ)の首にくくりつけてやったと。
 男はのんびりのんびり歩いて、昼頃(ひるごろ)になったら腹がへった。首に握り飯がくくりつけられてはいるが、手を動かすのがめんどうくさい。


 「ま、いいや。向こうから誰(だれ)かきたらとってもらおう」
と言うて、懐手(ふところで)をして歩いて行ったら、うまいあんばいに、向(む)こうから口を大きく開けた男がやってくる。無精な男は、
 「あんなに口を開けているところ見ると、よっぽど腹が空(す)いているにちがいない。あの人に頼(たの)んで、首から握り飯をとってもらおう」
と、待っていたら、大口を開けた男が目の前へやってきた。
 「もし」
 「あーん、わしに何か用か」
 「んだ。わしは首に握り飯をくくりつけてあるんだが、あんたさん、包(つつ)みをほどいて握り飯を出してくれんじゃろか。ついでにわしの口の中にひとつ食わえさせてくれ。そしたら、あんたさんに半分(はんぶん)、わけてあげるが」
 こう頼んだと。


 そしたら、大口を開けた男は、
 「わしはさっきから、笠(かさ)の紐(ひも)がゆるんで困(こま)っているが、その紐を結(むす)びなおすのがめんどうで、めんどうで、それでこうして口を開いて、笠が頭から落ちんようにしているところだ。我(わ)が紐を結ぶのもめんどうなのに、お前さんの首の包みをほどくなんぞ嫌(いや)なこった」
 こう言うたと。
 
 それっきり。

「二人の無精者」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

何でも面倒でも言葉を出すのはできてしまうんですよね( 10代 / 男性 )

楽しい

めんどうで、めんどうで、おもろすぎ(笑) ( 20代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

子供と猫絵(こどもとねこえ)

 むかし、むかし、あるところに絵を画くことが大好きな子供がおった。  とりわけ猫が好きで、いつも猫の絵ばかり画いていたと。  あるとき、  「おら、絵を画きながら諸国を旅して歩きたい」 といって、絵道具を担いで旅に出たと。

この昔話を聴く

婿の鬼退治(むこのおにたいじ)

 むかし、ある村にすぐれた娘(むすめ)をもった長者があった。  娘は器量もよいが、機織(はたおり)の手が速く、朝六(む)つから暮(くれ)の六つまでに一疋(いっぴき)の布(ぬの)を織(お)り上げてしまうほどだったと。

この昔話を聴く

順めぐり(じゅんめぐり)

むかし、あるところに、一人の猟師(りょうし)がおったげな。ある日、鉄砲をかついで山に出掛け、藪(やぶ)にしゃがんで獲物(えもの)が来るのを待っちょっ…

この昔話を聴く

現在883話掲載中!