おもしろいよ〜〜ん( 10代 / 男性 )
― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかしがあったと。
ある時、地獄(じごく)のえんま大王さまが、
「近頃バカにひまでしかたねぇが、いってぇどうなってんだや」
といって、家来(けらい)の鬼(おに)を一匹、この世に調べに来させたんだと。
そしたら、信濃(しなの)の善光寺(ぜんこうじ)に極楽(ごくらく)へ通じる鍵(かぎ)があって、そいつにさわるとみんな善男善女(ぜんなんぜんにょ)になって、極楽へ行っちまう事がわかったと。
地獄へ戻った鬼からその話を聞いたえんま大王さま、くやしがるやら、おこるやら。
「よっし!そんならおめえ、もいっぺん行ってな、その鍵(かぎ)を盗(と)って来い」
「ヘヘエ」
ということになって、家来の鬼は、また、善光寺へやってきた。そしたら、前にもましてたいそうなにぎわいだ。
「やあ、地獄行きの顔がいっぺえおるぞ。おっ、今、ひとを押しのけて鍵にさわったあいつ、ありゃあ釜(かま)ゆでだな。こいつから、ひい、ふう、みいときて、四(よ)ったりめ、うん、 こいつは何くわぬ顔をしとるが、本性(ほんしょう)が意地悪(いじわる)に出来とる。地獄へ来たなら針の山へ追いやって、痛みを分からせてやるのだが。」
物かげに隠(かく)れて評定(ひょうてい)しているうちにあたりが暗くなり、やがて誰もいなくなった。
「ふん、あんなのがみいんな極楽行きとは、あきれたもんだ。こいつぁ、どうでもあの鍵を盗ってしまわにゃあ、不公平(ふこうへい)ってなもんだ」
鬼が、抜き足(ぬきあし)差し足(さしあし)鍵に近づいて、さて盗ろうとしたが、鍵はびくともしない。押しても引いてもとれない。鬼の力をありったけ出して、「ウーン」とやってみたけど、やっぱり盗れないんだと。
「こりゃだめだ。もういっぺん出直そう」
帰ろうとしたら、今度は足がちょっとも動かない。
「どうしたんかや」
と思っていると、あれよ、あれよという間に鬼も極楽へ行ってしまったんだと。
地獄では待っても待ってもこの鬼が帰ってこないので、別の鬼をこの世へ来さしたと。
そしたら、これも帰ってこない。次から次と別の鬼をこの世へ来さしたが、どれも帰って来ん。とうとう、えんま大王さまみずから、この世へやって来たと。善光寺へ行って鍵を盗ろうとしたら、やっぱり盗れん。
「なんじゃ?」
といってる間に、何と、えんま大王さままで、極楽へいってしまったそうな。
おしめえ。
おもしろいよ〜〜ん( 10代 / 男性 )
昔、昔。一人の山伏(やまぶし)居(え)だけど。何時(えじ)だがの昼間時(じき)、一本松の木の下歩いて居たけど。ちょこっと見だば、その木の根っコさ小さな狸(たぬき)コ昼寝(ひるね)して居だけど。
九州の南、奄美群島(あまみぐんとう)のひとつ、徳之島(とくのしま)の母間(ぼま)あたりの集落には、昔は夜になると、“イッシャ”という小(こ)んまい妖怪者(ようかいもん)が、犬田布岳(いぬたぶだけ)から下りて来たそうな。
「お階段めぐり」のみんなの声
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