民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 草木の話・動物の由来にまつわる昔話
  3. 梟の染物屋

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

ふくろうのそめものや
『梟の染物屋』

― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかしの大むかし。フクロウは染物屋だったと。
 店は、たいした宣伝もせんのに、えらくはんじょうしたそうな。
 朝はまだ日の出んうちから、色んな鳥がやって来て、思い思いの色や模様に染めてもらっては、得意がっておった。
 それを聞いたカラスは、
 「そんなに評判の染物屋なら、ひとつ、わしもお願いしてみるか」
というて、やって来たと。
 カラスは、その頃はまだ真っ白い身体(からだ)をしておったそうな。


 「フクロウどん、わしの羽をいい模様に染めてくれや」 
 「いいとも、いいとも。わしの腕によりをかけてやってみんべえさ だども、カラスどんよ、しばらくの間動いちゃぁなりませんぞ。
 動くと模様がうまく描(か)けませんでのう」
 フクロウは筆に墨(すみ)をどっぶりとふくますと何やら模様を描きはじめた。
 ところが、カラスはくすぐったくてたまらん。
 フクロウが筆を動かすたびに、身体をよじる。 

 「カラスどん、あれだけ言うたのに、なぜ動くんじゃ。ほれ見なされ、失敗したでねえか。えい、いっそ、こうしてやる」
 フクロウはカラスを真っ黒に染めてしまったと。
 店先にいた他の鳥たちは、真っ黒になったカラスを見て、笑って馬鹿にしたそうな。


 カラスは、
 「このフクロウの阿呆たれめ、腹が立ってならん」
と怒ったが、どもならん。それからというもの、カラスは、毎日フクロウの店にいっては、
 「もとの白い羽返せ」
と声高(こわだか)にさけぶんだと。
 フクロウはカラスが恐くてならん。カラスの出歩く昼間は、ボロ手拭でほおっかぶりをして、木の穴の中でじいっとうずくまっているようになったと。
 フクロウは夜になると、「ノリツケホッホ、ノリツケホッホ」って、一声ずつくぎって低い声で喘ぐけれど、あれは、カラスが目をさまさないようにしているんだと。

 そればっかり。

「梟の染物屋」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

フクロウの生態をうまく利用しており昔の人の観察力に頭が下がります。( 70代 / 男性 )

驚き

カラスが白い時期があったなんて驚き( 10代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

山神と孝行息子(やまがみとこうこうむすこ)

むかしむかし、あるところにおっ母さんと息子とが居てあったと。息子は山で薪(たきぎ)を伐(き)っては町方へ売りに行き、親子二人その日その日を暮していたと。

この昔話を聴く

酒呑み爺と壁の鶴(さけのみじいとかべのつる)

昔、あるところに酒屋があったそうな。ある日の夕方、その酒屋にひとりの爺さんがやって来た。ねじれ木の杖をついて、うすよごれた着物の前あわせのところから…

この昔話を聴く

死人と留守番(しにんとるすばん)

 むかし、あるところに旅商人の小間物売りがおったと。  小間物売りが山越(ご)えをしていたら、途(と)中で日が暮(く)れたと。  あたりは真っ暗闇(やみ)になって、行くもならず引き返すもならず途方に暮れていたら、森の奥(おく)に灯りが見えた。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!