整合のとれた、よくできた面白い話ですね。 挿絵もいいですね。
― 宮城県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかしむかし、ヒバリとウズラとヨシキリは、仲良(なかよ)く一緒(いっしょ)に暮(く)らしていたそうな。
ある日、ウズラに用ができて町へ出掛(でか)けることになったと。
ウズラは履(は)き物(もの)が無(な)かったので、ヒバリの草履(ぞうり)を借(か)りようと思った。
「ヒバリさん、今日おれ町へ行かねばなんねくなったが、ちょっこら草履を貸(か)してくれんか」
「この草履はおれの一張羅(いっちょうら)で、他(ほか)にかわりが無いから嫌(や)でがんす」
「そんなこと言わんで、ちょこっとだから貸してくらっしぇ」
「やんでがす」
「ちょこっとだけ」
ウズラはヒバリが嫌(や)だ嫌だと言うのを無理(むり)やり借りて、履いて町へ出掛けたと。
その日はちょうど、市(いち)の立つ日で、町にはたぁくさんの人が出ておった。
小っさいウズラは、何度も何度も踏(ふ)まれそうになったっと。右によけ、左によけ、ちょこまかちょこまかしているうちに、いつの間にか、ヒバリの大事な大事な草履が片一方(かたいっぽう)ぬげて、無(な)くなっておったと。
挿絵:近藤敏之
「こりゃあおおごとだぁ、どうあっても見(め)っけなきゃあ」
ウズラは、必死(ひっし)になって町のあちらこちらを探(さが)しまわった。が、どこへいったものやら、草履を見つけることができなかったと。
おえおえ泣(な)きながら家に戻(もど)ったら、ヨシキリが走(はし)ってきて、
「お前、どうして泣いているや」
て聞くから、泣きながら、
「実は、町へ行ったらこれこれ、しかじかぁ……」
と、草履を無くした訳を話したと。
「おれも探してやるから、ヒバリにおれもお詫(わ)びしてやるから。さ、さ、もう泣くな」
と言うて、一緒にヒバリにお詫びしたと。
ヒバリはカンカンに怒(おこ)って、
「それだから、おれ嫌んだって言ったんだ。おれの一張羅の草履なんだから、どうあっても探して持って来ねば、おれ堪忍(かんにん)しねえからな」
と言うた。
ウズラとヨシキリは、それから毎日毎日、草履の片一方を探して歩いた。したけど、どんだけ探しても、どんだけ尋(たず)ね歩いても見つからなかったと。
ウズラとヨシキリがヒバリに、
「銭(ぜに)っこやるから」
と言うても、
「かわりの草履を買(こ)うてやるから」
と言うても、ヒバリは『うん』と言わない。
「何が何でも、あの草履返(け)えせ」
と、ウズラを叩(たた)いたり蹴(け)ったりするもんだから、ウズラとヨシキリは辛抱(しんぼう)しきれなくなって、隠(かく)れることにしたと。
ウズラは草むらに隠れ住(す)み、ヨシキリは藪(やぶ)の中に隠れ住んだと。
昔、こんなことがあったもんだから、今でもヒバリは空高く舞(ま)いあがって、ウズラとヨシキリを探しては、
「まだ草履片一方見つからねえか、返せ返せ、ピーチク、パーチク」
と言うて、叫(おら)んでいるのだと。
挿絵:近藤敏之
ヨシキリはヨシキリで、
「ゲェジ、ゲェジ、カラゲェジ。草履片べら、なんだんべえ」
と、ウズラを勇気(ゆうき)づけてやっているんだと。
えんつこ もんつこ さげえた。
整合のとれた、よくできた面白い話ですね。 挿絵もいいですね。
狸のなかに「そばくい狸」というのがあるそうな。この狸はそばの実が黒く色づく頃になると、そば畑へ転がりこんで、体中にそばの実をつけ、穴へ帰ってから実をふるい落としてポリポリ食うという。
むかし、あるところに大きな酒屋があったと。 酒屋には一人娘(むすめ)がいて、顔は目も覚めるほどの美しさなのに、手足は蛇(へび)そっくりの肌で蛇鱗(うろこ)がびっしり着いてあったと。
「ヒバリとウズラとヨシキリ」のみんなの声
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