欲深婆さんだけど、ちょっとかわいそう( 10歳未満 / 男性 )
― 熊本県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
資料 全国昔話資料集成6
肥後昔話集 木村裕章編
むかし、あるところに正直な婆(ばあ)さんがおったと。
あるとき、婆さんは団子(だんご)をこしらえて、親類(しんるい)の家へ持っていった。そしたら途中で石につまづいて転んでしもうた。
そのひょうしに重箱(じゅうばこ)の蓋(ふた)が開いて、団子がひとつ、道端(みちばた)の大きな穴に転がり落ちたと。
そしたら、穴の中から、
「ダンゴコロリン、ダンゴコロリン」
いうて、あとを催促(さいそく)してきたと。婆さんは面白くなってその穴に団子を投げ入れたと。
挿絵:福本隆男
そしたらまた、
「ダンゴコロリン、ダンゴコロリン」
いうて来たと。
婆さん、いよいよ面白(おもしろ)がって、とうとうみんな投げ入れてしまったと。
「ありゃ、なぁんも無(の)うなった」
いうて重箱の中を見ていたら、穴の中から、
「重箱コロリン、重箱コロリン」
いうてきたから、重箱も投げ入れたと。
そしたら今度は
「婆コロリン、婆コロリン」
と催促してきたので、とうとう婆さんも穴の中へ飛び込んだと。
穴の中には道があって、それを、ずーっと下りて行くと、向こうに灯りが見えたと。
それをたよりに着いてみたら、鬼の岩屋だったそうな。
婆さん魂消(たまげ)て、逃げて戻ろうとしたら、岩屋の中から鬼が出てきて、
「お前はなかなか正直(しょうじき)じゃな。さっきは団子をありがたかった。すまんが、今日から俺たちを助けてくれんか。お礼はする」
いうた。
挿絵:福本隆男
婆さん恐わ恐わその鬼の岩屋で暮らすことになったと。そしたら鬼は、
「飯(めし)を炊(た)いてくれ」
いうて、米粒(こめつぶ)を三粒くれたと。婆さんは、たった三粒で、と妙に思うたが、鬼の言うとおり、大きな釜(かま)で三粒の米を炊いてみたと。
そしたらなんと、すぐに大釜一杯のご飯が出来たと。
「こら、便利な米もあるもんだ」
と感心したと。
鬼たちは、ご飯を食べるとすぐに、
「俺たちは仕事に出掛ける」
いうて、婆さんに留守番(るすばん)させて、岩屋を出て行ったと。
婆さんは、今のうち、思うて、大きい袋に不思議な米をいっぱい詰(つ)めて、穴から逃げ出て、家へ戻ったと。
そして、ためしに釜に米三粒入れて炊いてみたら、やっぱり釜いっぱいにご飯が炊けた。
腹いっぱい白いご飯を食べていると、となりの欲深か婆さんがやって来て、
「昨日の貧乏、今日の長者。いったいどうしてだ」
いうて、そのわけを訊(き)いたと。
婆さん、これこれこうだと話して聞かせたと。
欲深か婆さん、これを聞いて家にとって帰り、さっそく団子をこしらえて、道端の穴に投げ入れたと。
そしたら穴の中から、
「ダンゴコロリン、ダンゴコロリン」
と催促の声があって、みんな投げ入れたと。
今度は、
「重箱コロリン、重箱コロリン」
というから、重箱を投げ入れたと。
「さあ、いよいよ婆の番だぞよ」
とわくわくしながら待っていると、
「婆コロリン、婆コロリン」
と催促して来た。欲深か婆、
「ほうれきた」
いうて、喜び勇んで穴に飛び込んだと。
挿絵:福本隆男
穴の道をどんどん下りて行くと、鬼の岩屋があって、
「おう、これだこれだ」
いうていたら、岩屋から鬼が出て来て、
「盗人婆がまた来た」
いうて、欲深か婆をつかまえ、よってたかって打ちすえてから、食うてしもうたと。
こんでしみゃー。
欲深婆さんだけど、ちょっとかわいそう( 10歳未満 / 男性 )
おむすびころりんみたいで、とてもおもしろかったです!( 10歳未満 / 女性 )
お婆さん、この米は盗んだということまでちゃんと話したのかな?いくら欲深婆さんだって、人の罪まで被ることないのに……( 30代 / 女性 )
おむすびころりん?( 10代 )
欲ばり婆さんは、欲ばりだけれど、 食べられてしまうからかわいそうだとおもいました(^o^)( 10歳未満 / 女性 )
ちょとと欲深ばあがかわいそう
昔、あるところに、人の住まない荒(あ)れた屋敷(やしき)があったそうな。何でも昔は、分限者(ぶげんしゃ)が住んでいたそうだが、どうしたわけか、一家みな次々に死に絶(た)えてしもうて、そののちは、だあれも住む人もなく、屋敷と仏壇(ぶつだん)だけが荒れるがままの恐(おそ)ろしげになっておった。
「婆コロリン」のみんなの声
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