民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 人まねの失敗にまつわる昔話
  3. ふしぎな手拭

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

ふしぎなてぬぐい
『ふしぎな手拭』

― 高知県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭

 とんと昔、ある村の一番(いちばん)大きな金持(かねも)ちの家へ、ある日、ひとりのみすぼらしいなりをしたお遍路(へんろ)さんがやって来たそうな。
 門口(かどぐち)に立って、御詠歌(ごえいか)を歌(うた)い、何がしかの寄進(きしん)を乞(こ)うたと。
 すると、そこの奥(おく)さんは、
 「このせわしいときに、お前なんぞにとりあっていられん。さあ、とっとと出て行き」
と言うて、邪険(じゃけん)に追(お)い払(はら)ってしもうた。


 この様子(ようす)を、この家(いえ)の女中(じょちゅう)さんが見ていて、こっそり握(にぎ)り飯(めし)を作ると、いそいでお遍路さんのあとを追(お)いかけ、
 「お遍路さん、お腹(なか)が空(す)いたでしょう。これでも食べて」
と言うて、お握りを渡(わた)したと。
 
 するとお遍路さんは、
 「これはほんのお礼(れい)です。受(う)け取(と)って下され」
と言うて、白い手拭(てぬぐい)をくれたと。
 あくる朝、女中さんは顔を洗(あら)い、お遍路さんからもらった手拭で顔をふいた。ご飯の支度(したく)に台所(だいどころ)へ行くと、みんなから、
 「色が白うなっている」
 「きれいになってえ」
 「昨日とずいぶん違(ちが)いやな」
と言われた。


 そこで鏡(かがみ)を見ると、見違(みちが)えるほどの色白(いろじろ)のべっぴんさんになっておったと。
 「どうして」
 「何をしたら、そうなるの」
 みんなが根(ね)ほり葉(は)ほり訊(き)くので、昨日のお遍路さんの話をすると、それが奥(おく)さんの耳にも届(とど)いた。奥さんは、
 「ほんなことなら、私も何ぞやるがじゃった」
と残念(ざんねん)がり、女中さんを呼(よ)びつけると、
 「ええかね、今度(こんど)あのお遍路さんを見かけたら、じきに知(し)らせてよ」
と、言いつけたと。

 それからしばらくして、お遍路さんは、また村へやって来た。女中さんが見つけて、家へ招(しょう)じ入れたと。
 「奥さま、この間、私に手拭をくれた方が見えました」
と言うたら、奥さんはニコニコして、
 「さあ、何でも欲(ほ)しい物をあげるよ」
と言うて、手あたり次第(しだい)に物をやったと。


 するとお遍路さんは、お礼だと言って、帯揚(おびあ)げをくれた。
 奥さんが喜(よろこ)んで、早速(さっそく)締(し)めてみると、帯揚げはいつの間にか蛇(へび)になって、赤い舌(した)をシュー、シューと出したと。
 奥さんはウーンと唸(うな)って、気を失(うしな)ってしまったと。
 
  むかしまっこう 猿まっこう
  猿のつべは ごんがりこ。
 

「ふしぎな手拭」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

緋鯉の恩返し(ひごいのおんがえし)

むかし、あるところに貧乏な若者が住んでおったと。若者は川のそばに、小っぽけな田んぼを作って暮らしておったと。あるとき、雨が降り続いたので、田の水をは…

この昔話を聴く

女の子と鬼のお面(おんなのことおにのおめん)

とんとん昔があったげな。あるところに九つ(ここのつ)になる女の子とお婆(ばあ)さんと二人おったげな。その女の子のお父さんやお母さんは亡(な)くなって…

この昔話を聴く

小三郎池のはなし(こさぶろういけのはなし)

むかし、むかし、さてむかし。ある村に、小三郎(こさぶろう)という木こりの若者がいたそうな。小三郎は木こりの親方の家におる、ちんまという飯炊(めした)…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!