なんとなくオチの意味がわからなかった。ただ、山犬いました。夜道をだましだまし帰りました。次の日、お礼にとおいていった赤飯なくなってました。おしまい、って、何が頓智咄なのかわかんない
― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
これは私のおばあちゃんが、おばあちゃんのおじいさんより聞(き)いた話ながやと。
そのおじいさんは、大工(だいく)の仕事(しごと)をしていたということやけんど、ある日の朝、家を出るとき、
「今日は仕事を早(はや)じまいして去(い)ぬるき、灯(あかり)はいらん」
いうて、毎日(まいにち)日も暮(く)れてから帰っている山道(やまみち)のための灯を持たずに、大きな山を越(こ)えた村へ仕事をしに行ったと。
ところがその日は、仕事の段(だん)どりが狂(くる)って去ぬるべき刻限(こくげん)が遅(おそ)うなり、とうとう夜になってしもうた。
夜道(よみち)を去ぬるにも灯は無(な)し、思いついた知(し)り合いの家へ灯を借(か)りに立ち寄(よ)ると、中から、
「おぎゃあ、おぎゃあ」
という赤ん坊(ぼう)の声。
さては、思うて敷居(しきい)をまたぐと、先日までおなかの大きかった嫁(よめ)さんに、今生(う)まれたところだということで、お祝(いわ)いの言葉を言うて灯を借りようとしたと。
ところが、その家の主人(しゅじん)の言うには、出産(しゅっさん)の日に立ち寄った者には『あかび』というて、夜道を去ぬると必(かなら)ず山道に山犬(やまいぬ)が出るというので、何分(なにぶん)ともに今夜は泊(と)まるよう、えらくすすめられたと。
けんど、そのおじいさんはもともと気丈(きじょう)なんで、
「なんの、山犬が出たら、話し相手(あいて)になってえいわ」
と笑(わら)いとばして、無理(むり)に灯を借りて夜道を戻りよったと。
ところが、なんと山道にかかり、峠(とうげ)にやっとたどりつこうしたとき、峠の道の両側(りょうがわ)に大きな金色をした丸(まる)っこいもんが四つ、ギランと光(ひか)っているではないか。
気丈なおじいさんも、さすがに、ギクッとして立ちどまろうとしたが、ぐっと腹(はら)に力を入れ、何げない様子(ようす)でじいっと暗闇(くらやみ)をすかして見ると、大きな大きな山犬が二匹、道の両側から頭をつきあわせてこちらを見て道をとおせんぼしておったと。
おじいさんは、子供(こども)の頃(ころ)よく、
「こんなときは山犬を友達(ともだち)のように思って、何げなくふるまえば山犬も何もしない」
と、おじいさんたちから聞いていたので、内心(ないしん)うんと恐(こわ)いのをがまんして、
「おお、お前らあ、わしの話し相手(あいて)に来てくれたがか、すまんのう。そんなら一緒(いっしょ)に去んでくれるか」
と言うと、道をふさいでいた二匹の山犬はパッと飛びのき、山の下(くだ)り道をあとになり先になり走るんと。 二匹がおじいさんの傍(かたわら)を、ざわざわ駆(か)けぬけるのは、生きた心地(ここち)がしなかったと。あんまり恐いので、つい足をすべらせて尻餅(しりもち)をついてしもうた。
さあ大変(たいへん)、こんなとき山犬は飛びかかってくる。おじいさんはとっさに、
「おお、いっとき一休(ひとや)みしょうか。お前らも休めや」
と言うと、二匹の山犬は、また道の両側に腹ばいになったと。
おじいさん、やれ助(たす)かったと一息ついて、
「どりゃ、去のうかのう」
言うて立つと、山犬もさっきのように、あとになり先になりして、とうとう村はずれまで戻って来たと。
おじいさん、やっと人心地ついて、
「ほんまに、お前らのおかげで淋(さみ)しゅうのうて戻って来られた。おおきによ。
わしの家はこの向こうの道よりちいっと入ったところにある家じゃけん、今晩の礼に赤飯(せきはん)をたいて、明日(あした)の晩、門口(かどぐち)へ置(お)いておくけん、食いに来てくれや」
と言うと、二匹の山犬は人の言葉(ことば)が判(わか)るのか、さっといなくなったと。
帰っておばあさんにこの事を話し、赤飯をたくさんたいて大きな桶(おけ)に入れ、夜に門口へ置いておいたと。
あくる朝、おじいさんが桶を見に行くと、あれほどあった赤飯が一粒(ひとつぶ)もなくなっていたと。
むかしまっこう 猿(さる)まっこう。
なんとなくオチの意味がわからなかった。ただ、山犬いました。夜道をだましだまし帰りました。次の日、お礼にとおいていった赤飯なくなってました。おしまい、って、何が頓智咄なのかわかんない
今一つ、最後のオチが決まらなかったかな? 全体に面白かった( 50代 / 女性 )
むかし、糸魚川街道(いといがわかいどう)で荷物を運んでいた牛方に三十郎という者があった。ある日のこと、牛二頭を追って大網峠(おおあみとうげ)にさしか…
「峠の山犬」のみんなの声
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