― 高知県 ―
語り 井上 瑤
再話 市原 麟一郎
大正の頃、土佐の羽根村(はねむら)に留(とめ)やんという大工がおった。
あるとき、嫁にやった娘に子供が出来そうな、いうき、朝まだ暗いうちに隣り村へ出かけたと。
すると、途中(とちゅう)で、
「オンチャン、オンチャン」
と、誰やら呼ぶ声がする。ふり向くと、二メ―トルぐらい先に、小坊主がニコニコ笑いながら立っておる。留やんは、
「おんしゃあ、なんの用なら」
いうと、小坊主が、
「オンチャン、すもうとろよ」
いう。留やんはバカにするなと、舌打ちしょったが、
「オンチャン、とろう。すもうとろうよ」
と、あんまりしつこうに言うき、とうとう相手になってとり始めたそうな。
「ヨイショ、ヨイショ」
「ほりゃ、ほりゃ、こりゃどうじゃ」
留やんは、力いっぱい小坊主を投げつけた。
けんど、なんぼ投げられても小坊主は平気の平左。留やんはカッカして、力いっぱい小坊主をねじつけて、泥の中へ押しつけ、
「どうじゃ、参ったか」
いうと、うしろの方から、
「オンチャン、ここぜよ」
いう声がするき、ふりむくと、また小坊主が涼しい顔でニコニコ笑いよる。
もう今度こそハラワタが煮えくりかえりそうになって、今しも飛びかかって行こうとすると、
「こらこら、おまん、そこでいったい何をしゅうぜよ」
こういうて、寄って来るもんがあるそうな。
「あしゃ、この小坊主をやっつけゆうけんど、どういても勝てなあよ」
留やんが悔しそうにこういうと、その男のひとは、
「おまん、自分をみてみいや、ひとりぜよ。誰っちゃ、おりゃせんに。そりゃ石ぜよ」
いわれて留やんは、ハッと気がついたと。
ようよう見てみると、ひとりでタンボの中を転びまわったり、石をけとばしたりして、泥まみれ、血まみれになっておったそうな。
「チャ、あしゃ(俺)、今の今まで、確かに小坊主と相撲をとりよったに、しょう(正)不思議なことじゃよ」
「おまん、そりゃ、しばてんに化かされちょったろう」
「まっこと、ありゃ、しばてんじゃったか」
と、留やんは恐れいったそうな。
昔まっこう猿まっこう、
猿のつべはぎんがりこ。
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むがす、むがす、あっどごに貧乏だったげんども、正直で働き者の百姓がいたど。 八十八夜様が来っと、何がなくても餅を搗いて神さんさ上げて、豊作を祈願してたど。 ところが、ある年のこと、不作で飯の米にもこと欠くようで、八十八夜様がやって来ても、餅搗いて上げようもなかったんで、隣近所さご無心して、やっと餅を搗いて上げることができたど。
「留やんとしばてん」のみんなの声
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