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すてごのむくい
『捨て子の報い』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
採集・再話 今村 泰子
整理・加筆 六渡 邦昭

 むかし、堀内(ほりうち)の甚六(じんろく)という人がいてあったど。
 貧乏(びんぼう)で、着る物てば、夫婦にひとつしか無かったすと。
 あるとき、親父(おやじ)背中(せな)あてひとつ着て山仕事に出て行ったと。嬶(かかあ)、洗濯に行ったきゃ、大雨降ってきたために、親父心配なって、家さ帰ってきたところ、嬶家にいねもんで川さ行ってみたわけだ。
 したけ、水たくさん出て越えられねくて、柳(やなぎ)の枝につかまってたと。


 そこで親父、六尺褌(ろくしゃくふんどし)投げてつかまらせて川を渡らせたと。
 そこさ川上から箱コ流れてきたわけだ。
 その箱コ拾って開けてみたっきゃ、生まれたばかりの赤児(わらし)と金とが入ってたと。貧乏だ為に赤児まで連れて行かれねぇ、とて、金だけ取って、赤児はそのまま箱コさ入れて流してやったと。
 
捨て子の報い挿絵:福本隆男


 甚六親父と嬶、夜間(よま)にその金持って京都さ行って、米つき屋をはじめたと。繁昌(はんじょう)して、たいした儲(もう)けて、かまど良くなったど。したら子供欲しくなったわけだ。
 清水(きよみず)の観音様(かんのんさま)に、三七、二十一日篭(こも)って、
 「どうか子供を お授(さず)け下さい」
って、願かけしたわけだ。
 満願(まんがん)の前の晩、夢に神様立って、
 「十体の地蔵を授けるから、大切にせい」
て、いって呉(け)たど。
 嬶、間もなく腹高くなって、男赤児(おとこわらし)産んだども、三月二十五日の天神様の日であったために、清松(きよまつ)て名前つけて、まず一生懸命(いっしょうけんめい)育ててあったと。


 その子、九つになったとき、遊びに出て行ったまま、晩げになっても帰って来ねぇので、今度ぁ、あちこち尋(たず)ねて歩いたけ、人の居ねぇ家のぶっ壊(こわ)れ井戸さ落ちて死んでいたと。
 あまり悲しくて、悲しくて、なんとかして清松に会いたいとて、高野山(こうやさん)にも行ったし、越中館山(えっちゅうたてやま)にも行ったと。願もかけたし、言霊(ことだま)も置いてきたども清松に会えねぇ。
 今度ぁ南部の恐山(おそれざん)に行ったわけだ。


 ずっと山の奥さ登るとしたけ、女の行かれねぇとこだと聞いて、山の茶屋さ頼んで、入って行ったども、どこさ行っても居ねがったと。
 「清松 いねかあ」
とて、百度巡(ひゃくどめぐ)りして、下の沢さおりて行ったきゃ、そこに菓子商人いてあったとナ。
 その人に、こうこうして訳(わけ)をしゃべったけ、
 「今ここにおれば、子供達(わらしたち)菓子取りに来るども、人がここにおれば、子供達来ねぇから木の影(かげ)に隠(かく)れておれ。へば、死んだ子に会えるべし」
とて、言って呉たと。
 して、隠れて見てたわけだ。


 はじめ女子供十人来たと。次に男子供十人来たども、その中にはいなかったと。その次の十人の中に清松かたって来たと。喜んで
 「清松」
て、とんで出て行って、
 「さあ家さ帰るべ」
ていったども、清松、他の子供達と立ち止まって、黙(だま)って見ているけど。
 「どうか歩(あゆ)んでけれ」
て、親父と嬶、一心(いっしん)に願ったとナ。したけ、
 「父(とと)も母(かか)もそういって呉るな。おれ、お前(め)方に大した恩(おん)になったども、おれ、箱入りになってきたとき、おれのこと流したから、もうなんともならねえ。あきらめて家さ帰ってけれ」
と、いったど。


 親父と嬶、ずいぶん前の大雨の日を思い出したど。
 流れてきた箱コ
 箱コの中に入っていた生まれたばかりの赤児と金。
 再び流れていく赤児の入った箱。
 親父の手ににぎられた金。
 親父と嬶は、清松があのとき流した赤児だったかと、今はじめて悟(さと)ったど。
 しかたねぐ二人、あきらめて、家さ戻って来たど。

 
捨て子の報い挿絵:福本隆男

 して、清松かたってきた十人の子供の地蔵を祀(まつ)ったど。
 
 とっぴん ぱらりのぷう。

「捨て子の報い」のみんなの声

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悲しい

きよまつかわいそう

悲しい

悪い事は出来ませんね〜。 後々自分自身に返ってくるのは当然ですが 子供の事なのでとても悲しい結末です。 教訓としてやはり誠実に生きようと改めて考えさせられました。( 60代 / 女性 )

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