小舟で釣鐘を二つも運んでたの?( 30代 / 男性 )
― 神奈川県 ―
語り 井上 瑤
再話 萩坂 昇
むかし、相模湾(さがみわん)の三ツ石 の沖(おき)にサメの夫婦が住んでおったと。
夫婦は、ここへ漁師(りょうし)の舟が来ると追い返しては、子ザメを守っておったと。
「三ツ石へ行くでねぇ。主(ぬし)のサメにおそわれるぞ」
と、漁師たちは、この沖を地獄(じごく)のように恐(おそ)れて近寄(ちかよ)らなかったと。
※相模湾の三ツ石・・・現在の神奈川県南西部にある真鶴半島
そんなあるとき、江戸の寺へ納(おさ)める大きな釣鐘(つりがね)を積(つ)んだ舟が三ツ石にさしかかった。
ドーン、ドーンと、舟底(ふなぞこ)に何かがぶつかってきた。
驚(おどろ)いた舟頭(せんどう)が海をのぞくと、大ザメがぶつかってきて、その勢(いきお)いは、今にも舟をひっくり返しそうだったと。
「荷を軽くせにゃ、沈(しず)められまっせ」
舟乗(ふなの)りは、叫(さけ)んだ。舟頭は鐘(かね)を結んでいた綱(つな)を切った。
鐘は襲(おそ)ってきたサメにかぶさり、のみこむようにして海の底へ沈んでいったと。
舟は、動き出したが、それもつかの間、また、ドーン、ドーンとぶつかってくる。
それはな、夫(おっと)を奪(うば)われた妻(つま)のサメが襲ってきたのだ。その勢いは前よりもすごかったと。
舟頭は、また、悔(くや)しそうに綱を切って鐘を海へおとした。
鐘は、妻のサメものみこんで暗い海の底に沈んでいったと。
舟宿についた舟頭は、このことを話した。
「なにっ?三ツ石の主(ぬし)のサメをやっつけたと?」
話は漁師町にパーッとひろまった。
「主がいなけりゃ安心だ。あそこにゃ、さかながいっぱいいるでな」
漁師は、舟をこぎ出して三ツ石へいった。
すると海の底からボーン、ボーンと寺の鐘をつくような音が響(ひび)いてくる。漁師は不気味(ぶきみ)に思って逃(に)げ帰ってきたと。
その響きはな、鐘に封(ふう)じ込まれた父、母を助け出そうと、子ザメたちが、遠くから勢いをつけてきてぶち当たっているのだと。
そのときから、どれだけたったろうか。いまも三ツ石の海の底からボーン、ボーンという音が聞こえてくるのだと。
そしてな、ここにいるサメを、ぼんぼんザメというようになったんだと。
こんでちょっきり ひとむかし。
小舟で釣鐘を二つも運んでたの?( 30代 / 男性 )
サメがかわいかった( 10歳未満 )
可哀想なサメ 切ない ( 10歳未満 / 女性 )
切ない…(;A;)( 40代 / 女性 )
おもしろかった
切ない…(̂ ˃̥̥̥ ˑ̫ ˂̥̥̥ )̂( 50代 / 女性 )
むかしあったと。 あるところに人里離れた寺があったと。 来る和尚さまも、来る和尚さまも、みんな何かの化物にとって食われて、次の日には居なくなってしまう。 村では、和尚さまが居なくては法事も出来ん。困っておったと。
むかし、むかし、あるところに歌の三郎と笛の三郎という若者が隣合って住んでいた。歌の三郎は歌が上手で、笛の三郎は横笛が上手だった。二人は、もっと広い世界で芸を試してみたくなった。歌試し、笛試しの旅へ連れだって出かけたと。
「ぼんぼんザメ」のみんなの声
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